このページでは、一人社長の会社でそのまま使える出張旅費規程の雛形を全文掲載します。各条文が何を意味するか、自社向けにどこを書き換えるかを記入例付きで解説し、規程とセットで用意する出張報告書・精算書の運用書式まで案内します。日当などの金額は会社ごとに設定するものなので、雛形では「○○円(自社で設定)」と空欄にしています。
日当が個人で非課税・法人で損金になる節税の仕組みや、税務調査で否認されない作り方の詳細は、解説記事 一人社長の旅費規程 で扱っています。本記事は「実物の雛形と書き方」に絞ったHOW編です。
一人社長向け 出張旅費規程テンプレート(全文)
下の入力欄に会社名・宿泊料・日当・施行日などを入れると、その内容が規程本文にそのまま反映されます。金額や距離は空欄のままでも構いません(その場合は「○○○○円」のように残ります)。自社の出張の実態に合わせて金額を入れてください(金額の決め方は 一人社長の旅費規程 へ)。入力後は「規程をコピー」ボタンで規程全文をコピーできます。
出張旅費規程
第1条(目的)
この規程は、○○○○株式会社(以下「会社」という。)の役員が、業務のために出張する場合の旅費の支給に関する取り扱いを定めることを目的とする。
第2条(適用範囲)
この規程は、会社の役員に適用する。
第3条(出張の定義)
この規程において出張とは、業務のため通常の勤務地を離れて移動し、職務を行うことをいう。出張は、移動距離および宿泊の有無により次のとおり区分する。
(1)日帰り出張 宿泊を伴わない出張
(2)宿泊出張 宿泊を伴う出張
出張の起点となる勤務地、ならびに近距離・遠距離の取り扱いの基準となる片道の移動距離は、第8条に定める基準による。
第4条(旅費の種類)
この規程に定める旅費は、次のとおりとする。
(1)交通費
(2)宿泊料
(3)日当
第5条(交通費)
交通費は、出張の目的地までの往復に通常要する鉄道・航空機・バス・タクシー等の運賃の実費を支給する。利用する交通機関および経路は、合理的かつ経済的なものを選択するものとする。
第6条(宿泊料)
宿泊出張の場合、宿泊料として1泊あたり次の金額を支給する。
・役員 ○○○○円
宿泊料は、宿泊に通常要する費用をまかなうものとして定額で支給し、領収書の提出を要しない。
第7条(日当)
出張に際し、出張中の諸雑費にあてるため、1日あたり次の日当を支給する。
・役員 日帰り出張 ○○○○円/宿泊出張 ○○○○円
日当は、出張の区分および役職に応じて定額で支給し、領収書の提出を要しない。
第8条(出張の区分・支給基準)
近距離・遠距離の取り扱いは、片道の移動距離が○○キロメートル以上であるか否かを基準とする。
第9条(旅費の精算)
出張をした者は、出張の終了後すみやかに、出張報告書および出張旅費精算書を作成し、交通費の領収書等を添えて会社に提出するものとする。会社は、提出された書類にもとづき旅費を精算し、支給する。
第10条(規程の改廃)
この規程の制定および改廃は、取締役の決定による。
附則
この規程は、○○○○年○○月○○日から施行する。
金額・日付は空欄のままでもコピーできます
入力欄に会社名・金額・施行日などを入れると、すぐ下の規程本文に反映されます。空欄のままにした項目は「○○○○円」「○○キロメートル」「○○○○年○○月○○日」のプレースホルダのまま残るので、コピーした後でWord上で置き換えても構いません。「役員のみ」を選ぶと、第2条と宿泊料・日当の従業員欄が自動で外れます。入力が終わったら「規程をコピー」ボタンを押すと、規程の全文がプレーンテキストでコピーされ、WordやGoogleドキュメントにそのまま貼り付けられます。
各条文の意味と書き方(記入例)
雛形をそのまま使ってもよいのですが、各条文の意味を理解しておくと、自社の実態に合わせた書き換えがしやすくなります。主要な条文を順に見ていきます。
第1条・第2条 目的・適用範囲(一人社長は役員のみへの適用を明記)
第1条は規程の目的、第2条は誰に適用されるかを定める条文です。一人社長で従業員がいない会社の場合は、適用範囲を「会社の役員に適用する。」と書き換えておくと、実態と一致します。従業員を雇う予定があるなら、雛形のとおり「役員および従業員」としておいても構いません。適用対象を規程の中ではっきりさせておくことが出発点です。
第3条・第8条 出張の定義(移動距離・宿泊有無の区分)
第3条で出張を「日帰り(宿泊を伴わない)」「宿泊(宿泊を伴う)」に区分し、第8条で近距離・遠距離の取り扱いを片道の移動距離で定めます。日帰りか宿泊かは実際に宿泊したかどうかで決まり、距離の基準は近距離・遠距離の線引きに使う、という役割分担です。あらかじめ基準を決めておくことで、支給対象が客観的に判断できるようになります。距離での区分がなじまない業種では、移動先の地域や所要時間を基準にしても構いません。基準を社内でぶれずに運用できる形にするのがポイントです。
第4条〜第7条 交通費・宿泊料・日当の支給区分
第4条で旅費の種類を「交通費・宿泊料・日当」と定め、第5〜7条でそれぞれの支給方法を定めます。交通費は実費、宿泊料と日当は定額(領収書不要)とするのが一般的な作りです。役職や日帰り・宿泊の区分ごとに金額を分けて定めておくと、運用時の判断がシンプルになります。
支給額の定め方(金額は自社設定、決め方の根拠は解説記事へ)
第6条・第7条の金額は、各社が自社の出張の実態に合わせて設定する項目です。本記事では金額の目安は示していません。金額は出張の頻度・距離・職務内容・会社規模などをふまえて決めるもので、相場をそのまま当てはめればよいものではないためです。
金額をどう考えればよいか、また高すぎる日当が否認されるリスクについては、解説記事 一人社長の旅費規程 で扱っています。設定した金額が自社にとって妥当かは、税理士に確認するのが確実です。
第9条 精算・申請の手続き
第9条は、出張後にどう精算するかを定める条文です。出張報告書と出張旅費精算書を作成し、交通費の領収書を添えて提出する流れにしておくと、規程どおりに運用した記録が残ります。一人社長の場合でも、自分で書類を作って精算する形を踏むことが、後から見て規程が機能していたことを示す手がかりになります(具体的な書式は後述)。
自社向けにカスタマイズする手順
雛形をコピーしたあと、自社向けに整える手順を3つに分けて説明します。
① 役職区分の設定(一人なら役員のみ)
まず適用対象と役職区分を自社に合わせます。一人社長で役員が自分だけなら、第2条を「会社の役員に適用する。」とし、第6条・第7条の「従業員」の行は削除して役員分だけ残すとすっきりします。家族を役員にしている場合は、その役員も適用対象に含まれるよう書いておきます。
② 距離・宿泊基準の決め方
次に第8条の基準を決めます。片道何キロメートル以上を遠距離として扱うかを、自社の出張の実態に合う数値で設定します(日帰りか宿泊かは第3条のとおり実際に宿泊したかで決まり、ここで決めるのは近距離・遠距離の線引きです)。出張先が特定の地域に偏っているなら、距離ではなく「△△県外への移動」のように地域で区分しても構いません。いったん決めたら、その基準でぶれずに運用することが大切です。
③ 制定・改定時の運用(取締役の議事記録を残す)
最後に、規程をいつ・どのような内容で制定(改定)したかを記録します。第10条のとおり制定・改廃は取締役の決定によるため、一人社長で取締役が自分一人でも、決定した日付と規程の内容を記録として残しておくと、規程の存在と適用開始時期を後から示せます。附則の施行日とこの記録の日付が整合しているか確認しておきましょう。
カスタマイズで必ず埋める空欄チェック
- 会社名 — 第1条の「○○○○株式会社」を自社の正式名称に
- 適用範囲 — 第2条を「役員のみ」か「役員および従業員」か自社に合わせる
- 宿泊料・日当の金額 — 第6条・第7条の「○○○○円」を実際の金額に
- 区分の基準 — 第8条の「○○キロメートル」を自社の基準に
- 施行日 — 附則の「○○○○年○○月○○日」を制定(改定)日に
規程とセットで用意する運用書式
旅費規程は、作っただけでは機能しません。出張のたびに規程どおりに運用した記録を残してはじめて、規程が実態として動いていたことを示せます。セットで用意したい書式は、出張報告書と出張旅費精算書の2つです。これらは否認回避の証跡として、規程の実務と直結します(証跡がなぜ重要かは 一人社長の旅費規程 へ)。
出張報告書(何のために・どこへ行ったか)
出張報告書は、その出張が業務のためであったことを記録する書式です。出張の目的・訪問先・日程・業務内容を簡潔に残します。一人社長でも、出張の都度この報告書を作っておくと、私的な旅行ではなく業務出張であったことを後から示せます。
| 記載項目 | 記入例の内容 |
|---|---|
| 出張者 | 役職・氏名 |
| 出張期間 | 出発日〜帰着日(宿泊日数) |
| 出張先 | 訪問先・出張地の名称/所在地 |
| 出張の目的 | 商談・打合せ・現地調査など業務上の目的 |
| 業務内容・成果 | 当日行った業務と結果の概要 |
出張旅費精算書(規程に沿って何をいくら支給したか)
出張旅費精算書は、規程にもとづいて旅費をいくら精算したかを記録する書式です。交通費(実費・領収書添付)、宿泊料、日当を規程の区分に沿って集計します。規程の金額と精算書の金額が一致していることが、規程どおりに運用した証拠になります。
| 記載項目 | 記入例の内容 |
|---|---|
| 出張者・出張期間 | 出張報告書と対応させる |
| 交通費 | 区間ごとの実費(領収書を添付) |
| 宿泊料 | 規程の定額 × 宿泊数 |
| 日当 | 規程の定額 × 出張日数(日帰り・宿泊の区分に応じて) |
| 合計・精算日 | 支給合計額と精算した日付 |
この2つの書式を出張のたびに作り、出張報告書・精算書・交通費の領収書をセットで保管しておくと、規程と運用が一貫していることを示せます。
テンプレートを使うときの注意
この雛形はそのまま使える形にしていますが、いくつか押さえておきたい注意点があります。要点だけ示し、踏み込んだ理屈は解説記事に譲ります。
使う前に押さえる注意点
- 金額は自社で設定する — 雛形の金額欄は空欄。相場をそのまま当てはめるのではなく、自社の出張の実態に合わせて決める
- 規程を作るだけでなく運用する — 出張報告書・精算書を都度残し、規程どおりに精算してはじめて実態が伴う
- 不相当に高い金額は否認の対象になり得る — 実態とかけ離れた高額な日当は経費として認められないことがある(詳細は解説記事へ)
- 制定・改定の記録を残す — いつどの内容で定めたかを取締役の決定として記録しておく
日当が個人で非課税・法人で損金になる仕組みそのものや、否認されないための作り込みは、解説記事 一人社長の旅費規程 で詳しく扱っています。本記事の雛形を使う前に、一度そちらで仕組みを確認しておくと安心です。
よくある質問(FAQ)
Wordファイルでダウンロードできますか?
本記事ではダウンロードファイルは配布していませんが、ページ内の入力欄に会社名・日当などの金額・施行日を入れると規程本文に反映され、「規程をコピー」ボタンで規程の全文をプレーンテキストでコピーできます。コピーした内容をご自身のWordやGoogleドキュメントに貼り付けてご利用ください。条文番号も付番済みです(条文をまるごと削除した場合は番号を振り直してください)。
日当はいくらに設定すればよいですか?
本記事は雛形と書き方の提供に絞っているため、金額の目安は載せていません。日当の金額は、出張の実態・職務内容・会社の規模などをふまえて各社が自社で設定するものだからです。金額の決め方の考え方や、高すぎる日当が否認されるリスクについては 一人社長の旅費規程 で扱っています。最終的な金額の妥当性は税理士に確認することをおすすめします。
出張旅費規程は税務署に届け出が必要ですか?
出張旅費規程について、税務署へ事前に届け出る制度はありません。会社内で正式に制定して運用していることが前提になります。一人社長の会社でも、規程を作って取締役(自分)の決定として記録を残し、規程どおりに精算しておくことが大切です。なぜ届出ではなく規程と運用が重要なのか、その背景は 一人社長の旅費規程 で解説しています。
制定にあたって議事録は必要ですか?
出張旅費規程は、会社の意思決定として正式に定めたことを残しておくのが安全です。一人社長で取締役が自分一人の会社でも、いつ・どのような内容で規程を制定(または改定)したかを取締役の決定として記録しておくと、後から規程の存在と適用開始時期を示せます。記録の残し方は本記事「自社向けにカスタマイズする手順」で触れています。
出典・編集情報
このページは以下の公的機関・法令の公表情報を一次ソースとして作成しています。
執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月8日
内容は令和8年度(2026年)の現行法令に基づく一般的な解説で、個別の事案への適用を保証するものではありません。本記事の雛形は一般的なひな形であり、そのまま使えば必ず適正に処理されることを保証するものではありません。日当などの金額は自社の出張の実態に合わせて設定する必要があり、設定額の妥当性や個別の取り扱いについては税理士にご相談ください。