結論:前期20万円超なら中間申告、業績悪化なら仮決算が有利
設立2期目以降になると、税務署から「予定申告書」が届くことがあります。これは事業年度の途中で法人税を一度納める中間申告の案内です。届いた書類を前に「払う必要があるのか・いくらか・減らせるのか」を迷う方に向けて、まず要点を整理します。
| 論点 | 結論 | ポイント |
|---|---|---|
| 必要になるか | 前期の法人税が20万円超で必要 | 前期がこれ以下・赤字なら対象外が多い |
| 1期目 | 原則不要 | 前期がないため対象外 |
| 期限 | 6か月経過後2か月以内 | 事業年度開始の日から数える |
| 納め方 | 予定申告 か 仮決算 | 業績悪化時は仮決算が有利な場合あり |
| 納めすぎたら | 確定申告で還付 | 中間納付は前払い・最後に精算 |
ポイントは、中間申告はあくまで法人税の「前払い」であり、納めすぎても最後の確定申告で精算(還付)される点です。そのうえで、業績が前期より落ちている年は仮決算という方法を選ぶと、中間に納める額を当期の実態に合わせて抑えられることがあります。申告全体の流れと期限は法人決算・申告の流れと期限を、納付方法の詳細は法人税の納付方法と期限をあわせてご覧ください。
①中間申告が必要な法人 — 前期の確定法人税額20万円超が目安
法人税の中間申告が必要になるかどうかは、前事業年度の確定法人税額で決まります。目安として、前期の確定法人税額が20万円を超えると中間申告(予定申告)の対象になります(法人税法71条)。前期の税額がこれ以下の法人や、前期が赤字で法人税がかからなかった法人は、対象外になることが多くあります。
条文上の正確な基準は「算出額10万円超」
「20万円」はわかりやすい目安で、条文上の正確な基準は少し違います。法人税法71条では、次の式で計算した金額が10万円を超える場合に中間申告の義務が生じます。
中間申告が必要かどうかの判定(法人税法71条)
判定額 = 前期の確定法人税額 ÷ 前期の月数 × 6
この判定額が 10万円を超える → 中間申告が必要
※1年(12か月)決算なら「前期確定法人税額 ÷ 12 × 6」=前期の半分。
その半分が10万円超=前期確定法人税額が20万円超に相当します。
つまり、一般的な1年決算の法人では「前期の確定法人税額が20万円を超えるか」を見れば判断できます。判定に使うのは確定した法人税額(国税分)で、住民税や事業税は含めません。
中間申告が不要になる主なケース
- 前期の確定法人税額が20万円以下(判定額が10万円以下)の法人
- 前期が赤字で法人税がかからなかった法人
- 設立1期目の法人(前期が存在しないため対象外・法71条1項括弧書き)
- 事業年度が6か月以下の法人
判断に迷ったら前期の申告書を確認
自社が対象になるかどうかは、前期の法人税申告書に記載された確定法人税額で判断できます。対象になる場合は、多くは税務署から予定申告書(中間申告書)が送られてきます。届いた書類の金額をそのまま使うか、後述の仮決算を選ぶかを検討してください。判定に迷う場合は前期の申告内容をもとに税務署または税理士に確認すると確実です。
②期限 — 事業年度開始から6か月経過後、2か月以内
中間申告・納付の期限は、事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内です(法人税法71条)。年1回の確定申告(事業年度終了の翌日から2か月以内)とは別に、期の途中でやってくる期限なので、スケジュールに入れておく必要があります。
| 事業年度 | 6か月を経過した日 | 中間申告・納付の期限 |
|---|---|---|
| 4月1日〜翌3月31日 | 9月30日 | 11月30日 |
| 1月1日〜12月31日 | 6月30日 | 8月31日 |
| 10月1日〜翌9月30日 | 3月31日 | 5月31日 |
たとえば3月決算(事業年度が4月1日〜3月31日)の法人なら、9月30日が6か月を経過した日にあたり、そこから2か月後の11月30日が中間申告・納付の期限です。地方法人税は、国税の中間申告に連動して同じ時期に納めます(地方法人税法16条)。法人住民税・法人事業税についても、原則として同じ時期に中間納付が必要になります。
③2つの方法 — 予定申告と仮決算
中間申告で納める税額の決め方には、(A)予定申告(前期実績ベース)と(B)仮決算による中間申告の2つがあります。どちらを選ぶかで、中間に納める金額が変わることがあります。
| (A)予定申告 | (B)仮決算 | |
|---|---|---|
| 計算の基準 | 前期の実績 | 当期前半6か月の実績 |
| 計算の手間 | 少ない(式に当てはめるだけ) | 多い(6か月分の決算を組む) |
| 向いている状況 | 前期と同程度の業績が続く | 当期前半の業績が落ちている |
| 根拠 | 法人税法71条 | 法人税法72条 |
予定申告(前期実績)=前期法人税÷前期月数×6
予定申告は、前期の実績をもとに中間税額を計算する方法です。計算式は次のとおりで、おおむね前期に納めた法人税の半額を中間に納めるイメージになります。
予定申告による中間税額(法人税法71条)
中間税額 = 前期の確定法人税額 ÷ 前期の月数 × 6
※1年(12か月)決算なら「前期確定法人税額 ÷ 2」=前期のほぼ半額。
手間がほとんどかからないのが利点で、税務署から届く予定申告書にはこの方法で計算した金額が記載されています。前期と同程度の業績が続いている法人は、この金額をそのまま納めれば問題ありません。中間で多めに納めても、最後の確定申告で精算されます。
仮決算による中間申告=当期前半6か月で計算(業績悪化時に有利)
仮決算による中間申告は、当期の最初の6か月を1つの事業年度とみなして仮の決算を組み、その実際の所得をもとに中間税額を計算する方法です(法人税法72条)。当期前半の業績が前期より落ち込んでいる場合、前期実績ベースの予定申告より中間税額を抑えられることがあります。
仮決算を選ぶときの注意点
- 手間がかかる:前半6か月分の決算をもう一度組む必要があり、棚卸や決算整理も伴います。予定申告のように式に当てはめるだけでは済みません。
- 予定申告より高くなる場合は選べない:仮決算で計算した税額が予定申告による税額を超えるときは、仮決算による中間申告を選べません(法人税法72条1項ただし書)。業績が伸びている年に仮決算で多く納める、という使い方はできない仕組みです。
- 資金繰りとの兼ね合い:仮決算は「今期前半の落ち込みを中間納付に反映して、いったんの支出を抑えたい」ときに効果があります。最終的な年間の税額は確定申告で精算されるため、損得ではなく資金繰りのタイミング調整という性格が強い方法です。
前期は好調だったが当期前半で売上が大きく落ちた、というような年は、仮決算を検討する価値があります。ただし決算作業の手間が増えるため、税額の軽減幅と手間を見比べて判断するのが現実的です。
④中間申告書を出さないとどうなる — 予定申告とみなされる(法73条)
「中間申告書を出さなければ納めなくていい」と考えるのは誤りです。法人税では、期限までに中間申告書を提出しなかった場合、前期実績による予定申告書の提出があったものとみなされます(法人税法73条)。申告書を出していなくても、前期実績ベースの中間税額の納付義務は残るということです。
出し忘れても納付義務は残る
みなし提出が適用されるのは予定申告(前期実績ベース)です。中間申告書を出し忘れると、自動的に予定申告の税額で納付義務が確定し、納付が遅れれば延滞税の対象になり得ます。一方で、仮決算による中間申告を選びたい場合は、自分で期限内に申告書を提出する必要があります。出さずに放置すると、業績が落ちていても前期実績ベースの高い税額で確定してしまう点に注意してください。
まとめると、前期並みの業績なら届いた予定申告書のとおり納めれば足り、業績が落ちて仮決算で抑えたいときだけ自分で動いて期限内に申告する、という整理になります。納付方法や期限の管理は法人税の納付方法と期限で詳しく扱っています。
⑤消費税の中間申告 — 年税額で回数が変わる
中間申告は法人税だけでなく、消費税にもあります。消費税の中間申告は、前課税期間の消費税の年税額(国税分)に応じて回数が変わるのが特徴です(消費税法42条)。年税額が大きい法人ほど、納める回数が増えます。
| 前期の消費税の年税額(国税分) | 中間申告の回数 | 備考 |
|---|---|---|
| 48万円以下 | 原則なし | 任意で年1回の中間申告も可能(消法42条8項) |
| 48万円超〜400万円以下 | 年1回 | 半期に1回 |
| 400万円超〜4,800万円以下 | 年3回 | 3か月ごと |
| 4,800万円超 | 年11回 | ほぼ毎月 |
消費税の中間申告も、期限内に申告書を提出しなければ前課税期間実績による申告があったものとみなされます(消費税法44条)。免税事業者は消費税の申告自体が不要のため中間申告も発生せず、新設法人の1期目も対象外です。自社が課税事業者かどうかや、いつから課税事業者になるかは法人と消費税の基本で整理しています。
⑥中間納付が多すぎたら確定申告で還付される
中間申告で納めた税額は、あくまで年間の法人税の「前払い」です。最後の確定申告で、年間の確定税額から中間納付額を差し引いて精算します。もし中間納付額が年間の確定税額を上回った場合は、差額が還付されます(法人税法134条)。
確定申告での精算
確定申告で納める額 = 年間の確定法人税額 − 中間納付額
中間納付額 > 確定法人税額 のとき → 差額が 還付される
たとえば前期実績で中間に多めに納めたものの、当期は業績が落ちて年間の税額が下がった場合、納めすぎた分は確定申告で戻ってきます。このため「予定申告で多く納めてしまうと損」というわけではなく、最終的な年間の税額は変わりません。仮決算を選ぶかどうかは、損得というより「年の途中の資金繰りをどう調整するか」という観点で考えるのが実態に合っています。
よくある質問(FAQ)
前期の法人税がいくらを超えると中間申告が必要ですか?
おおむね、前事業年度の確定法人税額が20万円を超えると、法人税の中間申告(予定申告)が必要になります(法人税法71条)。正確には「前期の確定法人税額 ÷ 前期の月数 × 6」で計算した金額が10万円を超える場合に義務が生じる仕組みで、1年(12か月)を1事業年度とする一般的な法人では、これが前期の確定法人税額20万円超に相当します。前期の税額がこれ以下の法人や、前期が赤字だった法人は対象外になることが多くあります。
設立して間もない1期目でも中間申告は必要ですか?
いいえ、設立1期目は原則として中間申告は不要です。中間申告の要否は前事業年度の法人税額をもとに判定しますが、1期目には前事業年度が存在しないため、対象から除かれます(法人税法71条1項の括弧書き)。また、事業年度が6か月以下の法人も中間申告の対象外です。なお2期目以降は、前期の確定法人税額によって対象になるかどうかが決まります。
予定申告と仮決算は、どちらを選べばいいですか?
前期と同じくらいの業績が続いているなら、計算が簡単な「予定申告(前期実績ベース)」で問題ありません。一方、当期の前半6か月の業績が前期より大きく落ち込んでいる場合は、当期の実際の数字で計算する「仮決算による中間申告」を選ぶと、中間に納める税額を抑えられることがあります。ただし仮決算は前半6か月分の決算をもう一度組む手間がかかり、仮決算で計算した税額が予定申告の税額を上回る場合はその方法を選べません(法人税法72条)。手間と資金繰りのバランスで判断するとよいでしょう。
中間申告書を出し忘れるとどうなりますか?
法人税の中間申告では、期限までに中間申告書を提出しなかった場合、前期実績による予定申告書の提出があったものとみなされます(法人税法73条)。つまり申告書を出していなくても、前期実績ベースの中間税額の納付義務は残ります。納付を忘れると延滞税の対象になり得るため、対象になる年は納付額と期限を必ず確認してください。なお、仮決算による中間申告を選びたい場合は、自分で期限内に申告書を提出する必要があります。
消費税にも中間申告はありますか?
あります。消費税の中間申告は、前課税期間の消費税の年税額(国税分)に応じて回数が変わります(消費税法42条)。年税額が48万円以下なら原則不要、48万円超〜400万円以下なら年1回、400万円超〜4,800万円以下なら年3回、4,800万円超なら年11回の中間申告・納付が必要です。法人税と同じく、期限内に申告書を提出しなければ前期実績による申告があったものとみなされます。免税事業者や新設法人の1期目は対象外です。
出典・編集情報
このページは以下の法令・国税庁タックスアンサーを一次ソースとして作成しています。内容は令和8年度(2026年)時点の制度に基づきます。
- e-Gov 法人税法(第71条 中間申告/第72条 仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等/第73条 中間申告書の提出がない場合の特例/第134条 確定申告等による中間納付額の還付)
- e-Gov 消費税法(第42条 課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての中間申告/第44条 中間申告書の提出がない場合の特例)
- 国税庁タックスアンサー No.6609(中間申告の方法)
- 国税庁タックスアンサー No.6611(任意の中間申告制度)
執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月4日
このページの内容は令和8年度(2026年)の現行法令・国税庁タックスアンサーに基づく一般的な解説で、個別の事案への適用を保証するものではありません。中間申告の対象判定や税額の計算、仮決算の有利不利、地方税の中間納付の取扱いは、事業年度・前期の納税額・自治体などによって変わります。具体的な中間申告・納付の判断にあたっては、前期の申告内容をもとに税務署または税理士にご確認ください。