繰越欠損金とは|10年繰り越して黒字と相殺する仕組み(中小は100%控除)

繰越欠損金は、ある年の赤字(欠損金)を最大10年繰り越し、将来の黒字と相殺して法人税を抑える制度です(法人税法57条)。資本金1億円以下の中小法人は所得の100%まで控除でき、古い年の欠損金から順に使います。青色申告をしていることが前提で、前年の黒字に赤字をぶつけて還付を受ける「繰戻還付」も中小法人なら選べます。仕組みと使い方を一次ソースで整理します。

執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月4日

赤字(欠損金)は、青色申告なら将来の黒字と相殺できる

青色申告をしていれば、ある年の赤字を最大10年繰り越して将来の黒字と相殺し、法人税を抑えられます。中小法人は所得の100%まで控除でき、前年の黒字に戻して還付を受ける選択肢もあります。

  • 10年 繰越期間 将来の黒字と相殺できる(平成30年4月以後開始分)
  • 所得の100% 中小の控除上限 大法人は50%まで
  • 選択可 繰戻還付 前年の黒字に戻して還付(中小法人)
  • 青色申告 繰り越す条件 欠損の年に青色申告書を提出していること
繰越欠損金の仕組み(赤字を10年繰り越して黒字と相殺)を解説するガイド記事のアイキャッチ

結論:青色申告なら赤字(欠損金)は10年繰り越せる

事業年度に出た税務上の赤字を「欠損金」といいます。青色申告をしていれば、この欠損金を将来や前年の黒字にぶつけて法人税を抑えられます。まず全体像を整理します。

出典:法人税法57条(繰越控除)・80条(繰戻還付)。国税庁タックスアンサーNo.5762・No.5763。令和8年度(2026年)時点の標準的な扱い。
論点内容ポイント
繰り越せる期間最大10年古い事業年度の欠損金から先に使う
控除できる上限中小は所得の100%/大法人は50%資本金1億円以下なら全額相殺できる
繰り越す条件赤字の年に青色申告書を提出以後は連続して確定申告書を出す
もう一つの選択肢繰戻還付(前年の黒字に戻す)中小法人なら還付を受けられる

要点は、赤字の年でも青色申告を出しておけば、その赤字は将来の黒字と相殺できる「資産」になるということです。逆に申告を飛ばして青色を失うと、この繰越が使えなくなります。赤字の年の申告実務そのものは法人の赤字決算・赤字申告を、青色申告の維持や承認申請の期限は法人の青色申告のメリットと申請をあわせてご覧ください。

①繰越欠損金とは — 赤字を将来の黒字にぶつける制度

繰越欠損金とは、ある事業年度に生じた税務上の赤字(欠損金)を翌年以後に繰り越し、黒字になった年の所得と相殺して法人税を抑えられる制度です(法人税法57条)。法人税は各事業年度の所得に対してかかりますが、この制度があることで、複数年にまたがって損益を通算できる形になります。

具体的な計算イメージは次のとおりです。1年目に大きな赤字を出しても、それを捨てずに繰り越しておけば、黒字化した年の税負担を軽くできます。

繰越控除の計算イメージ

1年目:所得 −¥3,000,000(赤字)… 欠損金¥3,000,000を繰り越す

2年目:所得 ¥5,000,000(黒字)

→ 課税される所得 = ¥5,000,000 − ¥3,000,000 = ¥2,000,000

この例では、2年目に本来¥5,000,000にかかるはずだった法人税を、¥2,000,000分まで圧縮できます。設立直後は店舗や設備への先行投資で赤字になりやすいため、その赤字を軌道に乗ってからの黒字とぶつけられるのが大きな利点です。ただし、この制度を使うには赤字が出た年に青色申告書を提出していることが前提になります(要件は後述)。

②繰り越せる期間は10年・古い年の欠損金から先に使う

繰り越せる期間は、平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金で最大10年です(法人税法57条・国税庁タックスアンサーNo.5762)。それより前に開始した事業年度の欠損金は、繰越期間が9年になります。

出典:法人税法57条・国税庁タックスアンサーNo.5762。
欠損金が生じた事業年度繰越期間
平成30年4月1日以後に開始10年
平成30年3月31日以前に開始9年

もう一つ押さえておきたいのが控除する順序です。赤字の年が複数あって欠損金が積み上がっている場合、控除は最も古い事業年度に生じた欠損金から順に使います(先入先出)。これは、繰越期間の切れる順番に消化していくためで、放置すると期限切れで使えなくなる古い欠損金から優先的に活かす仕組みになっています。

10年を過ぎると期限切れで消える

繰り越した欠損金は、10年以内に黒字と相殺できなければ期限切れとなり、その分は使えなくなります。赤字が長く続いた後でようやく黒字化したようなケースでは、最初の年の欠損金がすでに期限を迎えていることがあります。黒字化の見通しと、どの年の欠損金がいつ期限を迎えるかをあわせて把握しておくと安心です。

③控除できる上限 — 中小法人は所得の100%、大法人は50%

繰越欠損金を控除できる上限は、法人の規模によって変わります。ここが中小法人と大法人で大きく異なる点です。

出典:法人税法57条。令和8年度(2026年)時点。
区分控除できる上限目安
中小法人(資本金1億円以下)繰越控除前の所得の100%所得の全額まで相殺できる
大法人(上記以外)繰越控除前の所得の50%所得の半分までしか相殺できない

資本金1億円以下の中小法人は、繰越控除前の所得の100%まで欠損金を控除できます。たとえば所得¥5,000,000に対して繰越欠損金が¥5,000,000以上あれば、所得を全額相殺してその年の法人税(所得連動分)をゼロに近づけられます。

一方、大法人は所得の50%までしか控除できないため、黒字の年でも所得の半分には法人税がかかります。1人法人や小規模な中小法人であれば中小法人として全額控除できると考えてよいですが、自社が中小法人に該当するかは資本金等の条件で判定されるため、規模が大きくなってきた場合は個別に確認してください。

④繰り越すための条件 — 欠損の年に青色申告・以後は連続して申告

繰越欠損金を使うには、次の2つの条件を満たす必要があります(国税庁タックスアンサーNo.5762)。

繰越欠損金を使うための条件

  • 欠損金が生じた年に青色申告書を提出していること:赤字(欠損金)が発生した事業年度に、青色申告書を提出していることが出発点です。この年が白色申告だと、その年の欠損金は原則として繰り越せません。
  • その後の各事業年度は連続して確定申告書を提出していること:欠損金を繰り越している期間は、毎期続けて確定申告書を提出している必要があります。なお、欠損が生じた年さえ青色なら、その後の年は白色でも「連続して確定申告書を提出」していれば繰越自体は維持されます。

実務上の注意点は、赤字の年こそ申告を飛ばさないことです。「納める法人税がないから申告しなくてよい」と考えて無申告にすると、青色申告の承認が取り消されたり、連続申告の要件を満たさなくなったりして、せっかくの欠損金を将来に活かせなくなる可能性があります。

繰越の前提は「青色申告の維持」

繰越欠損金は、赤字(欠損金)が生じた年に青色申告書を提出していることが前提の制度です。青色申告には設立後3か月などの承認申請の期限があるため、黒字・赤字にかかわらず早めに申請しておくことが出発点になります。承認申請の期限や青色申告そのものの特典は、法人の青色申告のメリットと申請でまとめて解説しています。赤字の年の申告実務は法人の赤字決算・赤字申告もあわせてご覧ください。

⑤もう一つの選択肢「繰戻還付」— 前年の黒字に赤字をぶつけて還付

欠損金の活かし方には、将来の黒字に繰り越す「繰越控除」のほかに、前年の黒字にさかのぼって相殺する「繰戻還付」という選択肢があります(法人税法80条)。前年に法人税を納めていれば、今年の赤字を前年にぶつけることで、納めた法人税の一部または全部の還付を受けられます。

繰戻還付で還付される法人税額

還付される法人税額 = 前期の法人税額 × (当期の欠損金額 ÷ 前期の所得金額)

※ 当期の欠損金額は前期の所得金額が上限

この制度を使えるのは、資本金1億円以下の中小法人です(資本金5億円以上の法人の完全支配下にある場合などは除きます)。前年の黒字に対して今年が赤字になったとき、来期以降の黒字を待たずにすぐ資金を回収できるのが繰越控除との違いです。

繰戻還付は大法人には原則使えない(現行規定)

繰戻還付は中小法人は適用できますが、それ以外の大法人については、租税特別措置法66条の12により令和8年3月31日までに終了する事業年度に生じた欠損金は原則として適用されません(清算中・解散・災害損失等の例外を除く)。これは期限付きの現行規定で、その後の取扱いは改正動向によります。1人法人・小規模な中小法人であれば中小法人として適用できると考えてよいですが、自社が該当するかは個別に確認してください。

繰戻還付と繰越控除のどちらが有利かは、前年の所得・今後の業績見通し・資金繰りによって変わります。すぐ資金を回収したいなら繰戻還付、来期以降に余裕をもって相殺したいなら繰越控除、というのが基本的な考え方です。判断に迷う場合は、自社の数字を見ながら税理士に相談すると整理しやすくなります。

⑥使えなくなるケース — M&A・組織再編時の制限(法人税法57条の2)

繰越欠損金は、いくつかの事情で使えなくなることがあります。代表的なのは次の2つです。

繰越欠損金が使えなくなる主なケース

  • 青色申告の承認が取り消された場合:青色申告は、2事業年度連続で期限内に申告書を提出しないなどの事情で承認が取り消されることがあります。取り消されると、欠損金の繰越をはじめとする青色の特典が使えなくなります。
  • M&A・組織再編で支配関係が大きく変わった場合:株式の譲渡や合併で特定の支配関係が生じた後、一定期間内に従来の事業をやめるなどの事情があると、それまでの繰越欠損金が使えなくなる場合があります(法人税法57条の2)。

とくに2つ目は、赤字を抱えた会社を買収して、その繰越欠損金だけを目的に利用するような行為を防ぐための制限です。具体的には、特定支配関係が生じた後5年以内に旧事業を全廃するなどの事情があると、繰越欠損金の引き継ぎが制限されます。

該当の判定は専門的。事前に税理士へ

この制限の要件は細かく、例外もあるため、自社が該当するかどうかの判断は専門的になります。株式の譲渡・合併・分割など、支配関係や事業内容が大きく変わる取引を検討する際は、繰越欠損金の扱いを含めて事前に税理士に確認することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

繰越欠損金とは何ですか?

繰越欠損金とは、ある事業年度に出た税務上の赤字(欠損金)を翌年以後に繰り越し、将来黒字になった年の所得と相殺して法人税を抑えられる制度です(法人税法57条)。たとえば1年目に¥3,000,000の赤字、2年目に¥5,000,000の黒字なら、2年目の所得から1年目の赤字を差し引いて、課税対象を¥2,000,000に圧縮できます。設立初期の先行投資で出た赤字を、軌道に乗ってからの黒字とぶつけられるのが大きな利点です。ただし利用するには、赤字が出た年に青色申告書を提出していることが前提になります。

繰越欠損金は何年繰り越せますか?

平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金は、最大10年間繰り越せます(法人税法57条・国税庁タックスアンサーNo.5762)。それより前に開始した事業年度の欠損金は繰越期間が9年です。繰り越した欠損金は古い事業年度のものから順に使い(先入先出)、10年を過ぎても使い切れなかった分は期限切れで消えます。黒字化の見通しと繰越期限のバランスを見ておくことが大切です。

繰越欠損金は所得のどこまで控除できますか?

控除できる上限は法人の規模で変わります。資本金1億円以下の中小法人は、繰越控除前の所得の100%まで欠損金を控除できます。一方、それ以外の大法人は所得の50%までに制限されます(法人税法57条)。1人法人や小規模な中小法人であれば、原則として所得の全額まで相殺できると考えてよいですが、自社が中小法人に該当するかは資本金等の条件で判定されるため、個別に確認してください。

繰戻還付と繰越控除はどちらを使えばよいですか?

前年が黒字で今年が赤字なら、赤字を前年にさかのぼって相殺し、前年に納めた法人税の還付を受ける「繰戻還付」(法人税法80条)を選べます。これは資本金1億円以下の中小法人が対象です(資本金5億円以上の法人の完全支配下にある場合などは除きます)。すぐに資金を回収したいなら繰戻還付、来期以降の黒字で使いたいなら繰越控除、という選び分けになります。どちらが有利かは前年の所得や今後の業績見通しによるため、税理士に相談すると判断しやすくなります。

繰越欠損金が使えなくなることはありますか?

あります。代表的なのは、青色申告の承認が取り消されたケースと、株主が大きく入れ替わるM&A・組織再編に伴う制限です。後者は、特定の支配関係が生じた後の一定期間内に従来の事業をやめるなどの事情があると、それまでの繰越欠損金が使えなくなる場合があります(法人税法57条の2)。要件は細かく、自社が該当するかの判断は専門的になるため、株式の譲渡や合併を検討する際は事前に税理士に確認することをおすすめします。

出典・編集情報

このページは以下の法令・公的資料を一次ソースとして作成しています。内容は令和8年度(2026年)時点の標準的な制度に基づきます。

執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月4日

内容は令和8年度(2026年)の標準的な制度に基づく一般的な解説で、個別の事案への適用を保証するものではありません。中小法人に該当するかの判定、M&A・組織再編に伴う繰越欠損金の制限(法人税法57条の2)の該当判断は専門的で、繰戻還付の大法人不適用は本ページ記載時点の現行規定(期限付き)です。実際の申告・納税の判断は、自社の決算状況をもとに税務署または税理士にご確認ください。

本ツールは令和8年度(2026年)の税率・基準をもとに計算しています。最新の情報は各省庁のWebサイト等でご確認ください。