結論:株式会社は義務、合同会社は不要
結論から言うと、株式会社は決算公告が会社法上の義務で、定時株主総会の後に貸借対照表などを公表しなければなりません(会社法440条1項)。これを怠ると100万円以下の過料の対象になり得ます(会社法976条)。一方で、合同会社には決算公告の義務がありません。
| 会社形態 | 決算公告の義務 | 根拠 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 義務あり(毎期) | 会社法440条1項 |
| 合同会社 | 義務なし | 公告義務の規定がない |
公告の方法は官報・日刊新聞紙・電子公告の3種類から定款で定めます(会社法939条)。実際には決算公告を行っていない中小企業もあると言われますが、これは義務がないという意味ではなく、義務を果たしていない状態です。以下で、何を公表するのか・どの方法を選ぶか・怠るとどうなるかを順に整理します。会社形態をこれから決める場合は合同会社と株式会社の違いも、公告方法の定め方は定款の作り方もあわせてご覧ください。
決算公告とは|何を・なぜ公表するのか
決算公告とは、株式会社が定時株主総会で計算書類の承認を受けたあと、遅滞なく貸借対照表(一定の会社は損益計算書も)を公表する手続きです(会社法440条1項)。株主や債権者など、会社と取引する人が会社の財務状況を確認できるようにするための情報開示の仕組みです。
株式会社は不特定多数から出資を受けたり、取引先や金融機関と関係を持ったりすることが想定されているため、財務情報を外部に開示する義務が課されています。これに対し、後述する合同会社は出資者と経営者が一致する閉鎖的な会社形態であることなどから、決算公告の義務は設けられていません。
公告方法は3種類|官報・日刊新聞紙・電子公告
会社が公告を行う方法は、次の3種類から選びます(会社法939条)。どの方法によるかは定款で定め、登記事項になります。設立時に決めておく必要があり、後から変更する場合は定款変更と登記が必要です。
| 公告方法 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| ①官報 | 国が発行する機関紙に掲載 | 掲載料がかかる。多くの中小企業が採用 |
| ②日刊新聞紙 | 時事を扱う日刊新聞紙に掲載 | 掲載料が比較的高くなりやすい |
| ③電子公告 | 自社サイト等に電子的に掲載 | 外部への掲載料はかかりにくいが要件あり |
電子公告で決算公告をする場合の特例
電子公告を公告方法とする場合、本来は公告が適法に行われたかを確認する「電子公告調査機関の調査」を受ける必要があります。ただし決算公告に限っては、この調査が不要とされています(会社法940条)。一方で、決算公告を電子公告で行うときは貸借対照表などを全文で掲載する必要があり、官報・新聞のように要旨の掲載で足りるわけではない点に注意してください。掲載は一定期間、継続して行う必要があります。
公告する内容|大会社と大会社以外で範囲が違う
公告する計算書類の範囲は、会社の規模によって異なります(会社法440条、根拠:法務省の解説ページ)。
| 区分 | 判定基準 | 公告する書類 |
|---|---|---|
| 大会社 | 資本金5億円以上 または 負債総額200億円以上 | 貸借対照表(B/S)+損益計算書(P/L) |
| 大会社以外 | 上記に該当しない | 貸借対照表(B/S)のみ |
設立直後の1人法人や小規模な株式会社は、ほとんどが大会社以外にあたるため、公告するのは貸借対照表(B/S)のみで足ります。なお官報や日刊新聞紙に掲載する場合は、貸借対照表の要旨の掲載が認められていますが、電子公告の場合は前述のとおり全文掲載が必要です。
しないとどうなる|100万円以下の過料
決算公告を怠ったり、不正な公告をしたりした場合、会社法976条により100万円以下の過料に処されることがあります。過料は刑事罰(罰金)とは異なり前科はつきませんが、会社法上の義務違反に対する制裁であることに変わりはありません。
「多くの会社が未公告」でも、やらなくてよいわけではない
実態として、中小企業のなかには決算公告を毎期は行っていない会社も少なくないと言われます。しかしこれは「義務がない」「やらなくてよい」という意味ではなく、義務を果たしていない状態にあたります。制度上は過料の対象であり、本来は毎期行うべきものです。本記事は、義務であることを前提に整理しています。公告の手間や費用を毎期負担したくないという事情があるなら、後述のとおり、そもそも公告義務のない合同会社を選ぶという判断もあります。
合同会社は決算公告の義務がない
ここまで見てきた決算公告の義務は株式会社に課されるもので、合同会社には決算公告の義務がありません。会社法は合同会社などの持分会社に計算書類の作成・保存は求めていますが(会社法617条)、株式会社の440条のような決算公告の規定を置いていないためです。
そのため合同会社は、毎期の決算公告にかかる手間や掲載料が発生しません。設立費用が株式会社より抑えられる点とあわせて、少人数・閉鎖的な会社で運営する場合に合同会社が選ばれる理由の一つになっています。会社形態をこれから決めるなら、信用力や将来の資金調達の見通しも含めて合同会社と株式会社の違いで比較してください。
決算公告の費用|公告方法ごとに異なる
決算公告にかかる費用は、選んだ公告方法によって変わります。
- 官報:掲載料がかかります。掲載する枠(行数・スペース)によって金額が変わります。
- 日刊新聞紙:新聞への広告掲載となり、官報より掲載料が高くなりやすい傾向があります。
- 電子公告:自社ホームページなどに掲載する形のため、サーバー費用などを除けば外部への掲載料はかかりにくいのが一般的です。ただし全文掲載・継続掲載などの要件を満たす必要があります。
官報の掲載料金は公表料金を確認する
官報の決算公告の掲載料金は、掲載枠によって決まります。具体的な金額は、公式に公表されている料金を官報販売所または所管の窓口で確認するのが確実です。本記事では、料金体系が変わり得ることをふまえ、具体的な金額は断定しません。費用を毎期負担したくない場合は、電子公告を選ぶ、あるいは公告義務のない合同会社を選ぶといった選択肢があります。
よくある質問(FAQ)
決算公告は本当に義務なのですか?
株式会社については、会社法440条1項で「定時株主総会の終結後、遅滞なく貸借対照表(大会社は貸借対照表と損益計算書)を公告しなければならない」と定められており、法律上の義務です。中小企業では実際には公告していない会社も少なくないと言われますが、これは「義務がない」という意味ではなく、義務を果たしていない状態にあたります。怠った場合は会社法976条により過料の対象となり得るため、本来は毎期行う必要があります。
決算公告の方法にはどんな種類がありますか?
公告方法は、(1)官報に掲載する方法、(2)時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、(3)電子公告(自社ホームページなどへの掲載)の3種類です(会社法939条)。どの方法によるかは定款で定め、登記します。電子公告を選んだ場合、通常の公告では必要となる電子公告調査機関の調査が、決算公告に限っては不要とされる特例があります(会社法940条)。一方で、貸借対照表などを全文で掲載する必要があります。
決算公告をしないと罰則はありますか?
会社法976条により、公告を怠ったり不正の公告をしたりした場合、100万円以下の過料に処されることがあります。過料は前科のつく刑事罰(罰金)ではなく行政上の制裁ですが、会社法上のれっきとした義務違反です。実際の運用として中小企業で広く徴収されているとは言いにくい面もありますが、制度上は対象であり、「やらなくてよい」と判断してよいものではありません。本記事は義務であることを前提に整理しています。
合同会社も決算公告をする必要がありますか?
合同会社には決算公告の義務がありません。会社法は持分会社(合同会社など)に計算書類の作成・保存は求めていますが、株式会社のような決算公告の規定を置いていないためです。公告にかかる手間や費用が毎期発生しないことは、合同会社を選ぶメリットの一つです。会社形態をこれから決める場合は、設立費用や信用力とあわせて検討するとよいでしょう。
決算公告の費用はどのくらいかかりますか?
費用は選んだ公告方法によって大きく変わります。官報や日刊新聞紙への掲載は掲載料がかかり、掲載枠や紙面によって金額が異なります。一方、自社ホームページなどで行う電子公告は、サーバー費用などを除けば掲載自体に外部への掲載料がかからないのが一般的です。官報の具体的な掲載料金は、公式に公表されている料金を官報販売所または所管の窓口で確認するのが確実です。本記事では金額を断定しません。
出典・編集情報
このページは以下の法令・公的資料を一次ソースとして作成しています。内容は令和8年度(2026年)時点の制度に基づきます。
- 会社法440条(計算書類の公告)/2条6号(大会社の定義:資本金5億円以上または負債総額200億円以上)
- 会社法939条(会社の公告方法:官報・日刊新聞紙・電子公告)
- 会社法940条(電子公告の調査。決算公告は調査不要・全文公告)
- 会社法976条(過料に処すべき行為:100万円以下の過料)
- 会社法617条(持分会社の計算書類の作成・保存。合同会社には決算公告の規定なし)
- 法務省「商業・法人登記」関連解説(公告方法・公告内容の区分)
執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月2日
内容は令和8年度(2026年)の制度に基づく一般的な解説で、個別の事案への適用を保証するものではありません。官報や日刊新聞紙の掲載料金は変動し得るため本ページでは金額を示していません。具体的な公告方法の選択・決算書類の作成・公告手続きについては、官報販売所等の窓口や司法書士・税理士などの専門家にご確認ください。