法人の税務調査|頻度・流れ・調査で指摘されたときの加算税

法人の税務調査は全社が毎年来るわけではなく、実地調査は年約5.9万件で全法人から見ればごく一部です(実調率は数%程度)。このページでは税務調査の頻度・事前通知から終了までの流れ・修正申告と更正の違い・調査で指摘されたときの加算税(過少申告・無申告・重加算税35%/40%)・何年前まで遡られるか(除斥期間)を、国税通則法と国税庁の公的資料を一次ソースに整理します。

執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月5日

法人の税務調査の基本(令和8年度・2026年)

全法人が毎年調査されるわけではありません。来たときの流れと、指摘されたときの加算税の重さを先に押さえておくと、過剰に不安にならずに備えられます。

  • 数%程度 実調率 実地調査は年約5.9万件・毎年来るわけではない
  • 5年/7年 遡及期間 原則5年・不正があると7年(通則法70条)
  • 35%・40% 重加算税 仮装・隠蔽があったとき(通則法68条)
  • 原則あり 事前通知 任意調査は開始前に通知される(通則法74条の9)
法人の税務調査:頻度・流れ・調査で指摘されたときの加算税を解説するアイキャッチ

結論:毎年来るわけではないが、来たら備えが要る

「うちにも税務調査は来るのか」「来たらどうなるのか」という不安は、設立して数期目の経営者によくある悩みです。まず結論から整理します。

出典:国税通則法74条の9・68条/国税庁 令和5事務年度 調査事績の概要。令和8年度(2026年)時点。
論点実像ポイント
頻度毎年は来ない(実調率は数%程度)実地調査は年約5.9万件・全法人から見ればごく一部
調査の種類ほとんどは任意調査マルサ(査察)は悪質な脱税が対象で別物
流れ原則は事前通知あり日時・対象期間などを事前に知らされる(通則法74条の9)
指摘されたとき自主的に直すほど軽い調査で発覚すると加算税が重くなる
重い場合重加算税35%・40%仮装・隠蔽があったとき(通則法68条)

ここからは税務調査の頻度・流れ・指摘されたときの加算税を、国税通則法と国税庁の公的資料を一次ソースに整理します。調査対策の基本である申告書(別表)の作り方は法人税申告書(別表)の書き方を、自分で申告するか税理士に頼むかは法人決算を自分でやるか税理士に頼むかをあわせてご覧ください。

①税務調査の頻度 — 実調率は数%程度

税務調査と聞くと「いつか必ず来る怖いもの」というイメージを持ちがちですが、実際にはすべての法人が毎年調査を受けるわけではありません。まずは公的な統計から、頻度の実像を確認します。

実地調査の件数と1件あたりの追徴

国税庁が公表した令和5事務年度(令和6年11月公表)の調査事績によると、法人税・消費税の実地調査の件数は約5万9千件でした。法人は全国に約290〜300万社あるため、単純に割れば毎年実地調査の対象になるのはごく一部にとどまります。

出典:国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」(令和6年11月公表)。
項目令和5事務年度の数値
実地調査の件数(法人税・消費税)約5万9千件
追徴税額の合計3,197億円
1件あたりの追徴税額549.7万円
不正計算が見つかった割合22.3%

「実調率は数%程度」は概算であって確定値ではない

調査対象になる割合(実調率)の公式な数値は、国税庁から公表されていません。ここでの「数%程度」は、実地調査の件数(年約5.9万件)と法人数(約290〜300万社)から概算したおおよそのイメージです。規模・業種・申告内容によって個社ごとの確率は大きく変わるため、「平均が数%だから自社も低い」と決めつけず、はじめから帳簿と証ひょうを整えておくのが基本です。

なお、1件あたりの追徴税額が549.7万円、不正計算が見つかった割合が22.3%という数字は、調査の対象に選ばれた法人の平均値です。調査対象は無作為ではなく、申告内容や規模などから選定されるため、これらの数字をそのまま「自社に来たときの金額」と読み替えるものではありません。

任意調査と査察(強制調査)の違い

ニュースで報じられる「マルサ(国税局査察部)の強制調査」と、通常の法人が受ける税務調査は別物です。両者の違いを整理します。

出典:国税通則法74条の2/国税犯則調査の規定。
区分任意調査査察(強制調査)
根拠質問検査権(通則法74条の2)国税犯則調査(裁判所の令状)
対象一般的な申告内容の確認悪質で大規模な脱税の摘発
実施所轄の税務署など国税局査察部(いわゆるマルサ)
通常の中小法人こちらが大半ほぼ対象にならない

通常の中小法人や1人法人が受けるのは、ほとんどが任意調査です。任意調査は質問検査権(通則法74条の2)に基づくもので、調査官の質問への回答や帳簿の提示に協力する必要があります。「任意」とはいえ正当な理由なく拒否すると罰則の対象になり得るため(通則法127条)、実務上は協力して進めるのが基本です。一方の査察は、裁判所の令状に基づいて行われる強制的な調査で、悪質・大規模な脱税が対象です。仮装・隠蔽のない通常の申告をしていれば、まず関わることはありません。

②税務調査の流れ — 事前通知から終了まで

任意調査は、原則として事前通知から始まり、実地調査(多くは1〜2日)を経て、終了手続で締めくくられます。全体の流れを時系列で押さえておきましょう。

出典:国税通則法74条の2・74条の9・74条の11。
ステップ内容根拠
①事前通知開始日時・場所・対象税目・対象期間などを原則として事前に通知通則法74条の9
②実地調査帳簿・証ひょうの確認、経営者への質問(多くは1〜2日)通則法74条の2
③調査結果の説明是正すべき点があれば内容を説明通則法74条の11
④終了手続是正なしの通知、または修正申告の勧奨通則法74条の11

事前通知で知らされること

任意調査では、調査の開始前に税務署から事前通知が行われるのが原則です(通則法74条の9)。電話などで、次のような項目が知らされます。

事前通知で伝えられる主な事項(通則法74条の9)

  • 調査を開始する日時
  • 調査を行う場所
  • 調査の目的
  • 対象となる税目(法人税・消費税など)
  • 対象となる期間(どの事業年度か)
  • 対象となる帳簿書類

事前通知があるため、いきなり調査官が来て何の準備もできない、ということは原則としてありません。日程の調整も、合理的な理由があれば相談できます。ただし、現金商売など事前に知らせると正確な実態把握が難しくなるおそれがある場合などは、例外的に事前通知を省略できるとされています(通則法74条の10)。無予告調査は限られたケースで、通常の法人に一般的に行われるものではありません。

事前通知を受けたら、まず帳簿と証ひょうの整理を

事前通知を受けたら、対象期間の帳簿(総勘定元帳など)と証ひょう(請求書・領収書・契約書)を整理し、申告内容との対応を確認しておくとスムーズです。顧問税理士がいれば、通知の段階で連絡し、立会いを依頼するのが一般的です。日々の申告精度を高めておくことが、結果として調査対応の負担を軽くすることにつながります。

調査終了時:修正申告の勧奨か、是正なしの通知か

実地調査と検討を経て、調査は次のいずれかの形で終了します(通則法74条の11)。

出典:国税通則法74条の11。
終了の形内容
更正すべき点がない場合その旨が書面で通知される(追加の税負担なし)
是正すべき点がある場合内容を説明したうえで、修正申告を「勧奨」される

申告内容に問題がなければ「更正すべき点がない」旨が書面で通知され、追加の税負担は生じません。是正すべき点がある場合は、税務署が内容を説明したうえで修正申告を勧奨します。この勧奨は強制ではなく、応じるかどうかは納税者が判断します。また、修正申告をすると、その内容について不服申立てができなくなる旨を税務署が説明する義務があります。修正申告に応じるか、更正処分を待つかは、次の章で整理する両者の違いをふまえて判断することになります。

③修正申告と更正はどう違うか

調査で指摘を受けたとき、税額を是正する方法には修正申告更正の2つがあります。両者は「誰が行うか」と「不服申立てができるか」が大きく異なります。

出典:国税通則法19条・24条/国税庁タックスアンサー No.2026。
項目修正申告更正
誰が行うか納税者が自発的に行う税務署長が職権で行う「処分」
根拠国税通則法19条国税通則法24条
不服申立て原則できない(自発的な行為のため)できる(再調査の請求・審査請求・訴訟)
納期限提出日が新たな納期限になる更正通知書で指定された期限までに納付
撤回一度出すと撤回不可

修正申告は、納税者が自分から申告内容を訂正して追加の税額を申告する行為です(通則法19条)。自発的な行為であるため、その内容について後から不服申立てをすることは原則できません。一方の更正は、税務署長が職権で税額を是正する「処分」です(通則法24条)。処分である以上、内容に不服があれば再調査の請求・審査請求・訴訟といった手続で争う余地があります。

指摘に納得できないなら、安易に修正申告しない選択肢もある

調査終了時に税務署から修正申告を勧奨されても、指摘内容に納得できない場合は応じないという選択肢があります。修正申告に応じると争う余地がなくなる一方、応じずに更正処分を受ければ、その処分について不服を申し立てる道が残ります。どちらが妥当かは事案によるため、判断に迷う場合は税理士に相談するのが安全です。なお、青色申告の承認を受けている法人への更正には、原則として理由の付記が必要とされるなど、手続上の保障があります。

④調査で指摘されたときの加算税

申告漏れなどが見つかると、本来納めるべき本税に加えて加算税がかかります。加算税の率は令和6年1月1日以後の現行値で説明します(古い率ではありません)。ポイントは、自主的に気づいて直すほど軽く、調査で発覚するほど重くなるという設計です。

過少申告加算税・無申告加算税

期限内に申告したものの税額が少なすぎた場合は過少申告加算税(通則法65条)、そもそも期限までに申告しなかった場合は無申告加算税(通則法66条)がかかります。いずれも、調査の事前通知前に自主的に直したか/調査で更正・決定を予知した後かで率が変わります。

出典:国税通則法65条・66条/国税庁タックスアンサー No.2026・No.2024。令和6年1月1日以後の現行税率。
タイミング過少申告加算税無申告加算税
事前通知前に自主的に修正・申告原則かからない(0%、通則法65条5項)5%
事前通知後〜更正等を予知する前5%(一定額超は10%)10/15/25%
調査で更正・決定を予知した後10%(一定額超は15%)15/20/30%

無申告加算税が「3段階」なのは金額で率が変わるため

無申告加算税は、納める税額の区分ごとに率が異なります。調査で更正・決定を予知した後の場合、50万円までの部分が15%、50万円を超え300万円までの部分が20%、300万円を超える部分が30%です(通則法66条)。事前通知後〜予知前であれば、これがそれぞれ10%・15%・25%に軽減されます。さらに、過去に無申告加算税や重加算税を課されたことがあるなど一定の場合は、10%が上乗せされる加重措置もあります。無申告は率が高く区分も重いため、申告を忘れていたことに気づいたら、調査を待たずできるだけ早く自主的に申告するほど負担が小さくなります。

なお、加算税とは別に、納期限の翌日から納付までの期間に応じて延滞税もかかります。令和8年(2026年)の延滞税は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、2か月を超えた期間が年9.1%です(国税庁 No.9205。割合は毎年変動)。修正申告後の納付や延滞税の取扱いは法人税の納付方法と期限で整理しています。

仮装・隠蔽があると重加算税(35%・40%)

単なる計算ミスや見解の相違ではなく、売上を隠す・架空の経費を計上するといった「仮装・隠蔽」があったと判断されると、過少申告加算税や無申告加算税に代えて、より重い重加算税が課されます(通則法68条)。

出典:国税通則法68条。令和6年1月1日以後の現行税率。
区分重加算税の率備考
過少申告加算税に代えて課される場合35%仮装・隠蔽があったとき
無申告加算税に代えて課される場合40%仮装・隠蔽があったとき
短期間に繰り返した場合上記に+10%過去に課された等の一定の場合

重加算税は、本税の35%・40%という重い負担に加え、悪質と判断されれば除斥期間が7年に延びるため(後述)、遡る年数も増えます。逆に言えば、仮装・隠蔽のない通常の申告で、計算ミスや見解の相違にとどまる範囲であれば、重加算税の対象にはなりません。日々の取引を正しく帳簿に記録し、根拠資料を残しておくことが、基本的な備えになります。

⑤何年前まで遡られるか(除斥期間)

税務署が更正・決定をできる期間には上限があり、これを除斥期間といいます(通則法70条)。つまり、税務調査で遡れる年数にも限度があります。

出典:国税通則法70条。
区分遡れる期間根拠
原則5年通則法70条
偽りその他不正の行為があった場合7年通則法70条(仮装・隠蔽など)
法人税の純損失(赤字)等に関する更正10年通則法70条

通常の調査では直近5年分が対象となり、仮装・隠蔽など悪質と判断される事案では7年分まで遡及されます。重加算税が課されるようなケースでは、率が重いだけでなく遡る年数も増えるため、結果として追徴額が大きくなりやすい点に注意してください。帳簿書類の保存期間(原則7年、欠損金が生じた事業年度は10年)とも関わるため、資料は捨てずに保管しておくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

設立したばかりの1人法人にも税務調査は来ますか?

可能性はありますが、全法人が毎年調査を受けるわけではありません。国税庁の公表によると、法人税・消費税の実地調査は令和5事務年度で約5万9千件です。法人は全国に約290〜300万社あるため、単純に割れば毎年実地調査の対象になるのはごく一部(実調率は数%程度)にとどまります。ただし、売上や利益が大きい、申告内容に不自然な点がある、無申告が続いているといった場合は調査対象に選ばれやすくなる傾向があります。「設立直後だから絶対に来ない」と考えず、はじめから帳簿と証ひょう(領収書・請求書等)を整えておくのが基本です。

法人の税務調査は何年に一度くらいの頻度ですか?

「何年に一度」と公的に決まった周期があるわけではありません。実調率(調査対象になる割合)の公式な数値は国税庁から公表されておらず、実地調査の件数(年約5.9万件)と法人数(約290〜300万社)から概算すると、平均的には毎年来るわけではなく数%程度というイメージになります。あくまで全体平均なので、規模や業種、申告内容によって個社ごとの確率は変わります。長く調査が来ていないことが「もう来ない」を意味するわけではない点に注意してください。

税務調査で指摘されたら、必ず追徴課税やペナルティがかかりますか?

調査の結果、申告内容に問題がなければ「更正すべき点がない」旨が書面で通知され、追加の税負担は生じません(国税通則法74条の11)。一方、申告漏れなどが見つかった場合は、本来納めるべき本税に加えて、過少申告加算税・無申告加算税などの加算税と、納期限からの延滞税がかかります。さらに、売上を隠す・経費を水増しするといった仮装・隠蔽があったと判断されると、重加算税(過少申告に代えて35%、無申告に代えて40%)という重いペナルティが課されます。指摘内容に納得できない場合に争えるかどうかは、修正申告で済ませるか更正処分を受けるかによって変わります。

修正申告と更正は何が違うのですか?

修正申告は、納税者が自分から申告内容を訂正して追加の税額を申告する行為です(国税通則法19条)。これに対して更正は、税務署長が職権で税額を是正する「処分」です(同24条)。大きな違いは、不服申立てができるかどうかです。更正処分には不服がある場合に再調査の請求や審査請求、訴訟といった手続で争う余地がありますが、自分で出した修正申告は自発的な行為なので、その内容について不服申立てをすることは原則できません。調査の終了時には、税務署が修正申告を「勧奨」しますが、これは強制ではなく、指摘に納得できない場合は修正申告に応じず更正処分を待つという選択肢もあります。

税務調査では何年前まで遡られますか?

法人税の更正・決定ができる期間(除斥期間)は、原則として法定申告期限から5年です(国税通則法70条)。ただし、偽りその他不正の行為によって税を免れていた場合は7年まで遡ることができます。また、純損失(赤字)等に関する更正の期間は10年とされています。つまり、通常は直近5年分が調査の対象になり、仮装・隠蔽など悪質と判断される事案では7年分まで遡及される、という整理になります。日々の帳簿や証ひょうの保存期間とあわせて押さえておくとよいでしょう。

出典・編集情報

このページは以下の法令・国税庁の公的資料を一次ソースとして作成しています。加算税の税率は令和6年1月1日以後の現行値、その他の内容は令和8年度(2026年)時点の制度に基づきます。

執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月5日

内容は令和8年度(2026年)の現行法令・国税庁の公表資料に基づく一般的な解説で、個別の事案への適用や調査結果を保証するものではありません。実調率は公的に公表された確定値ではなく、件数と法人数からの概算です。加算税・延滞税の割合や除斥期間の適用は、申告内容や仮装・隠蔽の有無など個別事情により変わります。実際の税務調査への対応にあたっては、税務署または税理士にご確認ください。

本ツールは令和8年度(2026年)の税率・基準をもとに計算しています。最新の情報は各省庁のWebサイト等でご確認ください。