結論:基本は別表一・四・五の4本、難所は別表四の加算減算
法人税の申告書は「別表」と呼ばれる複数の書類でできています。数が多く複雑に見えますが、青色申告の法人が常に提出する基本のセットは4本に絞れます。まず全体像を整理します。
| 別表 | 正式名称(要約) | 役割 |
|---|---|---|
| 別表一 | 各事業年度の所得に係る申告書 | 税額の集約(最終的な納税額) |
| 別表四 | 所得の金額の計算に関する明細書 | 利益→所得への加算・減算(中心) |
| 別表五(一) | 利益積立金額及び資本金等の額の計算 | 税務上のB/Sを補完 |
| 別表五(二) | 租税公課の納付状況等 | 税金の納付状況を整理 |
このうち中心になるのが別表四で、決算書の当期利益を税務上の所得に直す調整表です。自分で申告する場合、ここの加算・減算の判断が最大の難所になります。決算書そのものの読み方は決算書の見方を、自分でやるか税理士に頼むかの判断は決算を自分でやる vs 税理士に頼むをあわせてご覧ください。
①法人税申告書の構造 — 複数の別表でできている
法人税の申告書は、1枚の用紙ではなく、役割の異なる複数の別表を組み合わせて構成します。別表にはそれぞれ番号と正式名称があり、自社に関係する別表だけを選んで提出します。すべての別表を出すわけではありません。
大きく分けると、(1) 青色申告の法人が常に提出する基本の別表と、(2) 交際費や減価償却などその項目がある場合だけ提出する別表に分かれます。まずは基本の4本を押さえ、自社に該当する別表を足していく、という順で考えると整理しやすくなります。
決算書を作ってから申告書を作る
申告書を作る前提として、まず会計のルールで決算書(貸借対照表・損益計算書)を作る必要があります。申告書はその決算書の当期利益を出発点にするためです。決算書の読み方は決算書の見方で整理しています。
②常に出す基本セット — 別表一・四・五(一)・五(二)
青色申告の法人が常に提出する基本の別表は4本です。それぞれが何をする書類かを整理します。
別表一 — 各事業年度の所得に係る申告書(税額の集約)
別表一は「各事業年度の所得に係る申告書」で、課税所得・法人税額・税額控除を集約し、最終的に納める差引確定法人税額を示す、いわば表紙にあたる別表です。別表四で求めた所得をもとに税額を計算し、ここに集約します。
別表四 — 所得の金額の計算に関する明細書
別表四は「所得の金額の計算に関する明細書」で、決算書の当期利益を税務上の所得に調整する中心的な書類です。詳しくは次のセクションで扱います。
別表五(一)・五(二) — 税務上の財産と税金の納付状況
別表五(一)は「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」で、税務上の利益の積立や資本金等の額を管理する、税務版の貸借対照表を補完する表です。別表五(二)は「租税公課の納付状況等に関する明細書」で、法人税・住民税・事業税などの税金をいついくら納めたかを整理します。
| 別表 | 正式名称 | 何を計算・整理するか |
|---|---|---|
| 別表一 | 各事業年度の所得に係る申告書 | 法人税額・税額控除・差引確定税額 |
| 別表四 | 所得の金額の計算に関する明細書 | 当期利益→所得への加算・減算 |
| 別表五(一) | 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 | 税務上の利益積立金・資本金等 |
| 別表五(二) | 租税公課の納付状況等に関する明細書 | 税金の納付状況 |
③中心となる別表四 — 利益から所得への加算・減算
別表四は法人税申告書の中心です。会計のルールで計算した決算書の当期利益を出発点に、税務のルールに合わせて加算・減算の調整を行い、法人税の課税対象となる所得を求めます。会計上の利益と税務上の所得が異なるのは、会計と税務で目的が違うためです。
別表四での計算の流れ
- 出発点:決算書(損益計算書)の当期利益
- 加算:会計上は費用でも税務上は損金にできない項目を足す
- 減算:会計上は収益でも税務上は益金にしない項目などを引く
- 結果:税務上の所得(法人税の計算のもと)
加算の代表例(損金不算入)
加算は、会計上は費用に計上しているが、税務上は損金(経費)として認められない項目を利益に足し戻す調整です。代表的なものは次のとおりです。
| 加算項目 | 内容 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 法人税・住民税の本税 | 税金そのものは損金にならない | 法人税法38条 |
| 交際費の損金不算入額 | 交際費は損金算入に上限がある | 措置法61条の4 |
| 減価償却の超過額 | 税法の限度を超えて償却した分 | 法人税法31条 |
| 役員給与の損金不算入額 | 要件を満たさない役員給与 | 法人税法34条 |
減算の代表例(益金不算入・損金算入)
減算は、会計上は収益でも税務上は益金にしない項目や、別表で計算した損金算入額を引く調整です。代表的なものは次のとおりです。
| 減算項目 | 内容 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 受取配当等の益金不算入 | 一定の受取配当を所得から除く | 法人税法23条 |
| 欠損金の損金算入 | 過去の赤字を当期の所得から引く | 法人税法57条(別表七(一)から) |
ここが自分で申告する最大の難所
交際費がどこまで損金になるか、役員給与のどの部分が損金不算入か、減価償却が限度内かといった判断は、いずれも条文のルールに沿って行う必要があります。会計ソフトに金額を入れれば自動で別表が埋まる部分もありますが、そもそも何を加算・減算すべきかの判断はソフト任せにできない部分が残ります。脱漏や誤りがあると所得が変わり、税額が変わってしまいます。
④該当するときだけ出す別表
基本の4本に加えて、自社に該当する項目があるときだけ提出する別表があります。代表的なものは次のとおりです。多くの1人法人では、減価償却資産があれば別表十六(償却方法により(一)や(二)などに分かれます)、繰り越した赤字があれば別表七(一)、交際費があれば別表十五、といった形で必要なものを足していきます。
| 別表 | 正式名称(要約) | 出すケース |
|---|---|---|
| 別表六(一) | 所得税額の控除に関する明細書 | 預金利息などで源泉徴収された所得税がある |
| 別表七(一) | 欠損金の損金算入等に関する明細書 | 過去の赤字(欠損金)を繰り越している |
| 別表十五 | 交際費等の損金算入に関する明細書 | 交際費を支出している |
| 別表十六(償却方法別) | 減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 | 減価償却する資産がある(定額法は十六(一)・定率法は十六(二)など償却方法で枝番が分かれる) |
欠損金の繰越については法人の繰越欠損金で、青色申告の特典(欠損金の繰越・少額減価償却の特例など)については法人の青色申告のメリットと申請でそれぞれ詳しく扱っています。
⑤添付書類と提出先・期限
法人税申告書には、別表のほかに次の書類を添付します。財務諸表(決算書)と勘定科目内訳明細書は、e-Taxで申告する場合はデータ送信が必要(PDFなどのイメージ添付では不可)で、法人事業概況説明書はイメージでの添付も認められています。
主な添付書類
- 財務諸表(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書)
- 勘定科目内訳明細書(売掛金・買掛金などの内訳)
- 法人事業概況説明書(事業内容・従業員数などの概況)
提出先は、法人税・地方法人税は所轄の税務署、法人住民税・法人事業税は都道府県・市町村と分かれます。期限はいずれも事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(法人税法74条)。期限が土日祝にあたる場合は翌日が期限になります。
資本金1億円超はe-Tax義務、中小法人は任意
資本金1億円超の法人などは、法人税の電子申告(e-Tax)が義務化されています(法人税法75条の4)。資本金1億円以下の中小法人は、電子申告と書面提出のどちらを選んでもかまいません。設立直後の1人法人はほとんどが中小法人にあたるため任意ですが、会計ソフトの申告機能を使う場合はe-Taxでの提出が前提になることが多くあります。
申告から納付までの全体の流れと期限は法人決算・申告の流れと期限で、納付方法は法人税の納付方法と期限で整理しています。
⑥自分で書けるか — 別表四の判断が難所
取引がシンプルな1人法人なら、会計ソフトの申告機能を使って自分で申告書を作ることも不可能ではありません。ただし、前述のとおり別表四の加算・減算の判断は条文レベルの知識を要し、ここで脱漏や誤りが起きやすいのが実情です。
| 自分で(会計ソフト) | 税理士に依頼 | |
|---|---|---|
| 向いている人 | 取引がシンプル・コストを抑えたい | 取引が複雑・調整項目が多い |
| 別表四の判断 | 自己責任で判断 | 専門家が判断・チェック |
| コスト | ソフト利用料が中心 | 顧問料+決算申告料 |
| 誤りのリスク | 加算・減算の脱漏に注意 | 専門家のチェックで低減 |
会計ソフトに法人税申告書の作成機能があるかどうかは製品やプランによって異なるため、申告機能の有無は各社のサービスページでご確認ください。別表四の調整に不安が残る場合は、税理士に依頼するか、作成した申告内容を確認してもらう方が安全です。自分でやるか税理士かの判断軸は決算を自分でやる vs 税理士に頼むで、手間・税務リスク・費用の3軸から整理しています。
よくある質問(FAQ)
法人税申告書では、どの別表を必ず出しますか?
青色申告の法人では、別表一(各事業年度の所得に係る申告書)・別表四(所得の金額の計算に関する明細書)・別表五(一)(利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書)・別表五(二)(租税公課の納付状況等に関する明細書)の4本が、基本として常に提出するセットになります。これに加えて、交際費がある場合の別表十五、欠損金がある場合の別表七(一)、減価償却がある場合の別表十六(一)など、自社に該当する別表を追加で提出します。
別表四とは何をする書類ですか?
別表四は「所得の金額の計算に関する明細書」で、決算書(損益計算書)の当期利益を出発点に、税務上のルールに合わせて加算・減算の調整を行い、法人税の課税の対象となる所得を計算する書類です。たとえば、会計上は費用でも税務上は損金にできない交際費の一部や、役員給与のうち損金不算入になる部分、減価償却の超過額などを加算し、受取配当等の益金不算入額や繰り越した欠損金などを減算します。会計上の利益と税務上の所得をつなぐ橋渡しの表で、法人税申告書の中心になります。
会計上の利益と税務上の所得はなぜ違うのですか?
会計は会社の経営成績を正しく表すためのルール、税務は課税の公平を保つためのルールで、目的が違うためズレが生じます。たとえば交際費は会計上は全額が費用ですが、税務上は損金に算入できる額に制限があります(措置法61条の4)。役員給与も、会計上は費用でも税務上は一定の要件を満たさない部分が損金不算入になります(法人税法34条)。こうした差を別表四で加算・減算して調整し、税金の計算のもとになる所得を求めます。
法人税申告書は自分で書けますか?
取引がシンプルな1人法人であれば、会計ソフトの申告機能を使って自分で作成することも不可能ではありません。ただし難所は別表四の加算・減算で、交際費・役員給与・減価償却・引当金・受取配当等といった項目を条文レベルで判断する必要があり、ここで脱漏や誤りが起きやすい部分です。判断を誤ると税額が変わり、後の税務調査で指摘されるおそれもあります。別表四の調整に不安がある場合は、税理士に依頼するか申告内容を確認してもらう方が安全です。会計ソフトに申告書作成機能があるかどうかは各社のサービスページでご確認ください。
法人税申告書はどこにいつまでに出しますか?
法人税と地方法人税の申告書は所轄の税務署に、法人住民税・法人事業税の申告書は都道府県・市町村に提出します。いずれも事業年度終了の日の翌日から2か月以内が期限です(法人税法74条)。期限が土日祝にあたる場合は翌日が期限になります。なお、資本金1億円超の法人などはe-Tax(電子申告)が義務化されており(法人税法75条の4)、資本金1億円以下の中小法人は電子申告か書面提出かを任意で選べます。
出典・編集情報
このページは以下の法令・国税庁資料を一次ソースとして作成しています。内容は令和8年度(2026年)時点の制度に基づきます。
- 国税庁「法人税及び地方法人税の申告(確定申告)」(提出書類・添付書類・提出先)
- 国税庁「申告書・添付書類等(令和8年用)」別表一覧
- e-Gov 法人税法(第31条 減価償却/第34条 役員給与/第57条 欠損金の繰越/第74条 確定申告/第75条の4 電子情報処理組織による申告)
- 国税庁 e-Tax「大法人の電子申告の義務化の概要」
執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月5日
このページの内容は令和8年度(2026年)の現行法令・国税庁資料に基づく一般的な解説で、個別の申告内容への適用を保証するものではありません。別表四の加算・減算の判断、添付書類の要否、適用される別表は、事業の内容や取引によって変わります。会計ソフトの申告書作成機能の対応範囲は各社のサービスページをご確認ください。具体的な法人税申告書の作成にあたっては、税務署または税理士にご確認ください。