結論:決算書は3つの表、まず当期純利益と純資産を見る
設立して初めての決算を迎えると、会計ソフトや税理士から出てきた決算書を前に「どこを見ればいいのか分からない」と感じる方は多いものです。決算書は専門的に見えますが、構造は意外とシンプルです。まず全体像を整理します。
| 見るもの | どこにある | 何が分かる |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 損益計算書の一番下 | その年に黒字か赤字か |
| 純資産 | 貸借対照表の右下 | これまでの利益の蓄積・債務超過でないか |
| 現預金 | 貸借対照表の資産の上の方 | 手元の資金・資金繰りの余裕 |
| 売上高 | 損益計算書の一番上 | 事業の規模 |
決算書は大きく分けて貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・株主資本等変動計算書の3点セットです。それぞれが何を表すのかと、自社の数字でまず見るべき所を、順に整理していきます。決算書を作ったあと、それをもとに法人税の申告書(別表)を作る流れは法人税申告書の書き方で、自分で作るか税理士に頼むかの判断は決算を自分でやる vs 税理士に頼むでそれぞれ扱っています。
①決算書とは — 財務諸表(B/S・P/L・株主資本等変動計算書)
「決算書」は会計の言葉では財務諸表と呼ばれ、法人がおもに作成するのは次の3つの表です。法人税の確定申告では、この決算書を申告書に添付して税務署に提出します(法人税法74条)。
| 決算書(財務諸表) | 何を表すか | 時間の見方 |
|---|---|---|
| 貸借対照表(B/S) | 決算日時点の財産の状態(資産・負債・純資産) | ある一時点 |
| 損益計算書(P/L) | 1年間の儲け(売上 − 費用 = 利益) | 一定期間 |
| 株主資本等変動計算書 | 純資産がどう増減したか | 一定期間 |
ポイントは、貸借対照表が「決算日というある一時点」の財産の状態を表すのに対し、損益計算書は「1年間という期間」の活動の結果を表すという違いです。前者は会社の財産を写した写真、後者はその1年の動きを記録した動画、とイメージすると区別しやすくなります。株主資本等変動計算書は、この1年で純資産(おもに利益の蓄積)がいくら増減したかをつなぐ表です。
英語表記の B/S・P/L は略称
貸借対照表は英語で Balance Sheet(バランスシート)なので「B/S」、損益計算書は Profit and Loss Statement なので「P/L」と略されます。会計ソフトや税理士とのやり取りで出てくる言葉なので、どちらがどちらかを押さえておくと話が通じやすくなります。
②貸借対照表(B/S) — 資産=負債+純資産
貸借対照表(B/S)は、決算日時点で会社が何を持っていて(資産)、その元手をどう用意したか(負債・純資産)を表します。基本の関係は次のとおりで、左側(資産)と右側(負債+純資産)の合計は必ず一致します。
| 区分 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 資産 | 会社が持っている財産 | 現預金・売掛金・在庫・備品・建物など |
| 負債 | 返す義務があるお金(他人資本) | 買掛金・借入金・未払金など |
| 純資産 | 返す義務のない自前の元手(自己資本) | 資本金・利益剰余金(利益の蓄積) |
ここで重要なのが純資産です。純資産は「資産から負債を引いた残り」で、おもに資本金(設立時の元手)と利益剰余金(これまでの利益の蓄積)からなります。会社が黒字を続けると利益剰余金が積み上がって純資産が厚くなり、赤字が続くと純資産が削られていきます。
純資産でチェックしたいこと
- 純資産がプラスか(マイナスなら債務超過のサイン)
- 利益剰余金が前期から増えているか(黒字を積み上げられているか)
- 純資産が資本金より大きいか(設立後に利益を蓄えられているか)
純資産がマイナスの状態を債務超過といい、資産をすべて売っても負債を返しきれない計算になっている状態を指します。すぐに倒産するわけではありませんが、融資審査では不利になりやすいため、改善が必要なサインとして覚えておくとよいでしょう。
③損益計算書(P/L) — 5つの利益で儲けを段階的に見る
損益計算書(P/L)は、1年間の売上から費用を段階的に差し引いて、5つの利益を上から順に示す表です。どの段階の利益かによって「何を引いた後の儲けか」が変わるため、単に「利益」といっても意味が異なります。
| 利益の種類 | 計算 | 何を表すか |
|---|---|---|
| 売上総利益(粗利) | 売上高 − 売上原価 | 商品・サービスそのものの儲け |
| 営業利益 | 売上総利益 − 販管費 | 本業で稼いだ利益 |
| 経常利益 | 営業利益 ± 営業外損益 | 本業+財務活動を含む通常の利益 |
| 税引前当期純利益 | 経常利益 ± 特別損益 | 臨時の損益も入れた税引前の利益 |
| 当期純利益 | 税引前当期純利益 − 法人税等 | 最終的に手元に残る利益 |
たとえば営業利益は、人件費や家賃などの販売費及び一般管理費(販管費)まで引いた「本業の儲け」を表します。ここがプラスなら本業で利益を出せていることになります。一方、経常利益は借入金の利息などの営業外損益まで含めた、毎期繰り返される通常の利益です。
一番下の当期純利益が最終成績
損益計算書の一番下にある当期純利益が、法人税等まで引いた後に最終的に残る利益です。これがプラスなら黒字、マイナスなら赤字で、貸借対照表の利益剰余金(純資産)に加算(赤字なら減算)されていきます。決算書で「今年は儲かったのか」を一目で見たいときは、まずここを確認します。
④自社の決算書でまず見るべき3か所
決算書を細かく全部読む必要はありません。1人法人オーナーがまず押さえたいのは、次の3か所です。それぞれが会社の「成績」「蓄積」「資金」を表します。
| 見る場所 | どの表 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 損益計算書の最下行 | プラスなら黒字/マイナスなら赤字 |
| 純資産 | 貸借対照表の右下 | プラスを維持/マイナスは債務超過 |
| 現預金 | 貸借対照表の資産の上の方 | 当面の支払いに足りる手元資金があるか |
とくに見落とされがちなのが「利益が出ているのに現預金が少ない」というケースです。売掛金(未回収の売上)や在庫が多いと、損益計算書では黒字でも手元の現金は薄いことがあります。利益と現預金は別物なので、両方を見るのが資金繰りを守るコツです。
前期と比べると変化が見える
決算書は単年で見るより、前期の数字と並べて比べると会社の動きがよく分かります。売上が伸びているか、利益率が変わっていないか、純資産が増えているか、借入金が減っているか——会計ソフトの多くは前期比較の機能を持っているので、活用すると自社の傾向をつかみやすくなります。
⑤決算書と申告書の関係 — 決算書を作ってから税務調整する
決算書(財務諸表)と、税務署に出す法人税の申告書は別の書類です。流れとしては、まず会計のルールで決算書を作り、その当期純利益を出発点に、税務のルールに合わせて加算・減算の調整をして、税金の計算のもとになる所得を求めます。この調整を行うのが申告書の「別表四」という書類です。
決算書から申告書への流れ
- ① 会計ソフト等で決算書(B/S・P/L)を作る
- ② 決算書の当期純利益を出発点にする
- ③ 税務上の調整(加算・減算)を別表四で行い所得を計算
- ④ 所得に税率をかけて法人税額を求め、申告書として提出する
つまり、決算書がなければ申告書は作れません。決算書は申告の出発点であり、確定申告の際には申告書に添付して提出します(法人税法74条)。会計上の利益と税務上の所得がなぜズレるのか、別表四でどんな調整をするのかは法人税申告書の書き方で詳しく整理しています。
⑥誰が作るか — 会計ソフトか税理士か
決算書を誰が作るかは、大きく分けて会計ソフトを使って自分で作るか、税理士に依頼するかの2通りです。1人法人で取引がシンプルなら、クラウド会計ソフトで記帳から決算書の出力まで自力でこなすことも十分可能です。
| 会計ソフトで自分で | 税理士に依頼 | |
|---|---|---|
| 向いている人 | 取引がシンプル・コストを抑えたい | 取引が複雑・本業に集中したい |
| 手間 | 記帳と決算作業を自分で行う | 記帳〜決算〜申告を任せられる |
| コスト | ソフト利用料が中心 | 顧問料+決算申告料がかかる |
| 誤りのリスク | 判断の難所は自己責任 | 専門家がチェック |
ただし、減価償却や引当金、決算特有の調整仕訳には判断が伴います。決算書は読めても作るのは不安、という場合や、そもそも自社の決算書の数字が正しいか確かめたい場合は、税理士に相談する選択肢もあります。どちらが自分に合うかは決算を自分でやる vs 税理士に頼むで手間・リスク・費用の3軸から整理しています。
よくある質問(FAQ)
決算書とは何を指しますか?
法人の決算書は、会計の言葉では財務諸表と呼ばれ、おもに貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・株主資本等変動計算書の3つを指します。貸借対照表は決算日時点の財産の状態(資産・負債・純資産)を、損益計算書は1年間の儲け(売上から費用を引いた利益)を、株主資本等変動計算書は純資産がどう増減したかを表します。法人税の確定申告では、これらの決算書を申告書に添付して提出します(法人税法74条)。
貸借対照表と損益計算書の違いは何ですか?
貸借対照表(B/S)は「決算日というある一時点」の財産の状態を表す写真のようなもので、会社が持っている資産と、その元手である負債・純資産の内訳がわかります。一方、損益計算書(P/L)は「1年間という期間」の活動の結果を表す動画のようなもので、売上からさまざまな費用を引いて、最終的にいくら儲かった(または損した)かを示します。一時点の財産がB/S、一定期間の儲けがP/Lと整理すると区別しやすくなります。
決算書で最初に見るべきところはどこですか?
まずは損益計算書の一番下にある当期純利益(黒字か赤字か)、次に貸借対照表の純資産がプラスかどうか(マイナスだと債務超過)、そして貸借対照表の現預金(手元の資金)の3か所を確認すると、会社の状態をおおまかにつかめます。当期純利益はその年の成績、純資産はこれまでの利益の蓄積、現預金は資金繰りの余裕を表します。細かい勘定科目を全部読まなくても、この3点でまず全体像が見えます。
純資産がマイナスだとどうなりますか?
純資産がマイナスの状態を債務超過といい、資産をすべて売っても負債を返しきれない計算になっている状態を指します。すぐに倒産するわけではありませんが、金融機関の融資審査では不利になりやすく、改善が必要なサインです。設立直後は開業費用や初期投資で一時的に純資産が薄くなることもあるため、単年の数字だけでなく、利益を積み上げて純資産を回復できる見通しがあるかをあわせて見るとよいでしょう。
決算書は自分で作れますか?
クラウド会計ソフトを使えば、日々の取引を記帳していくことで貸借対照表・損益計算書は自動で集計され、決算書の形に出力できます。1人法人で取引がシンプルなら自分で作ることも可能です。ただし、減価償却や引当金、決算特有の調整仕訳は判断を伴うため、自信がない場合や取引が複雑な場合は税理士に依頼するか、申告まで含めて相談する方が安全です。自分でやるか税理士かの判断は別記事で整理しています。
出典・編集情報
このページは以下の法令・国税庁資料を一次ソースとして作成しています。内容は令和8年度(2026年)時点の制度に基づきます。会計の用語・構造の説明は一般的な会計基準・簿記の標準的な扱いに基づきます。
執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月5日
このページの内容は令和8年度(2026年)時点の現行法令と一般的な会計の考え方に基づく解説で、個別の会計処理や税務判断を保証するものではありません。決算書の作成や勘定科目の判断、減価償却・引当金などの決算整理は、事業の内容や取引によって扱いが変わります。本文中の数値例は構造を説明するための一般的な例であり、特定の会社の数字ではありません。具体的な決算書の作成・読み方については、会計ソフトの案内や税理士にご確認ください。