法人の減価償却|定額法・定率法と少額資産(10万・20万・30万/40万)の使い分け

法人が買った固定資産は取得価額で処理が分岐します。10万円未満は買った年に全額経費、20万円未満は一括償却資産で3年均等、30万円未満(令和8年4月以後40万円未満)は中小の少額特例で全額損金、それ以上は耐用年数で償却です。定額法・定率法の違いや償却方法の届出まで、一次ソースで整理します。

執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月5日

減価償却は「いくらの資産か」でまず分岐する

固定資産を買ったとき、いつ・いくら経費にできるかは取得価額で変わります。少額なら買った年に落とせ、一定額を超えると耐用年数にわたって少しずつ償却します。まず金額帯で自分のケースを判定し、それから償却方法を考えるのが近道です。

  • 全額経費 10万円未満 買った年に損金(全法人)
  • 一括償却資産 20万円未満 取得価額÷3を3年均等
  • 少額特例 40万円未満 令和8年4月以後・青色・年300万円まで
  • 1円 備忘価額 最後まで償却した残り
法人の減価償却(定額法・定率法と少額資産の使い分け)を解説するガイド記事のアイキャッチ

結論:金額帯でまず分岐、少額特例を使わない資産は耐用年数で償却

法人が固定資産(パソコン・車・設備・ソフトなど)を買ったとき、いつ・いくら経費にできるかは取得価額(買った値段)で決まります。少額なら買った年に全額落とせますが、一定額を超えると耐用年数にわたって少しずつ経費にしていきます。まず金額帯で自分のケースを判定し、それから償却方法を考えるのが迷わない順番です。

出典:法人税法施行令133条・133条の2、租税特別措置法67条の5。令和8年度(2026年)時点。
取得価額処理対象
10万円未満買った年に全額を損金全法人
10万〜20万円未満一括償却資産(取得価額÷3を3年均等)全法人(任意)
30万円未満(令和8年4月以後40万円未満)少額特例で全額を損金(年300万円まで)青色申告の中小企業者等
上記を選ばない/超える耐用年数にわたって減価償却全法人

なお同じ金額帯でも複数の選択肢があるケース(10万〜30万円)では、どれを選ぶかで償却資産税や事務負担が変わります。以下で1区分ずつ整理し、20万円以上を耐用年数で償却する場合の計算(定額法・定率法)まで確認します。法人の税の全体像は法人にかかる税金の種類と実効税率を参照してください。

取得価額でこう変わる(少額資産の3区分・早見表)

「少しずつ償却する」のが原則の減価償却ですが、金額の小さい資産は手続きを簡単にできる例外が3つあります。区分の境目は10万円・20万円・30万円(令和8年4月以後は40万円)です。まず全体像を表で確認します。

出典:法人税法施行令・租税特別措置法。各区分は要件を満たす範囲で任意に選べる。
区分取得価額処理根拠条文対象
少額の減価償却資産10万円未満買った年に全額を損金法人税法施行令133条全法人
一括償却資産10万〜20万円未満取得価額÷3を3年均等(月割不要)法人税法施行令133条の2全法人(任意)
中小企業者等の少額特例30万円未満(令和8年4月以後40万円未満)全額を損金(年300万円上限)租税特別措置法67条の5青色申告の中小企業者等

10万円未満:買った年に全額経費

取得価額が10万円未満の資産は、減価償却をせずに、事業に使い始めた年に取得価額の全額を損金にできます(法人税法施行令133条)。消耗品費などとして処理する一般的なケースです。判定は1個(1組)あたりの金額で行い、消費税の経理方式(税抜・税込)によって判定額が変わる点に注意します(税込経理なら税込金額で判定)。

10万〜20万円未満:一括償却資産で3年均等

取得価額が10万円以上20万円未満の資産は、「一括償却資産」として、取得価額を3年間で均等に償却できます(法人税法施行令133条の2)。

一括償却資産の各年の償却額

各年の損金算入額 = 取得価額 ÷ 3

(年度の途中で取得しても月割は不要・3年均等)

一括償却資産は償却資産税の対象外

一括償却資産には2つの利点があります。1つは月割計算が不要で、期末ぎりぎりに買っても初年度から取得価額の3分の1を償却できる点。もう1つは、償却資産税(固定資産税の一種)の課税対象に含まれない点です。同じ金額帯でも、少額特例(全額損金)を選ぶと償却資産税の対象になる一方、一括償却資産は対象外になるため、資産の台数が多い場合は税負担の差が出ることがあります。どちらを選ぶかは利益と償却資産税を見て判断します。

30万円未満:中小企業の少額特例(令和8年4月以後は40万円未満・年300万円まで)

青色申告の中小企業者等であれば、取得価額が30万円未満(令和8年4月1日以後に取得する分は40万円未満)の資産を、買った年に全額損金にできます(租税特別措置法67条の5)。1人法人や中小法人で使う機会の多い特例です。

年間300万円の上限と添付書類に注意

この特例には要件があります。①青色申告の中小企業者等(資本金1億円以下で、常時使用する従業員数が500人以下など)であること、②その事業年度の取得価額の合計が年間300万円まで(事業年度が1年未満なら月数按分)、③申告書に別表十六(7)を添付すること、です。300万円の枠を超えた分は通常の減価償却に戻ります。なお10万円未満の資産はもともと全額損金にできるため、この特例を使うまでもなく、特例の対象は10万円以上の資産です。

令和8年4月1日以後の取得分から上限が40万円未満に引き上げられる点は、決算前の購入計画にも影響します。決算前に打てる節税策の全体像は決算前にできる法人の節税対策で、この特例を含めて整理しています。

少額処理を選ばない資産は耐用年数で償却する

少額資産の区分に当てはまらない(または特例を選ばない)資産は、法定耐用年数にわたって減価償却します。耐用年数は「その資産が一般的に何年使えるか」を国が資産ごとに定めたもので、自分で勝手に短くすることはできません(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)。

法定耐用年数の代表例(建物・車・パソコン・ソフトウェア)

法人がよく取得する資産の法定耐用年数を抜粋します。実際には資産の構造・用途・細目によって細かく分かれているため、適用時は国税庁の耐用年数表で個別に確認してください。

出典:減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)・国税庁No.2100添付の耐用年数表。代表値の抜粋。
資産細目耐用年数
建物(鉄筋コンクリート造)事務所用50年
建物(鉄筋コンクリート造)住宅用47年
建物(木造)事務所用24年
車両運搬具(普通自動車)一般用6年
器具備品(パソコン)サーバー用以外4年
器具備品(サーバー)その他の電子計算機5年
ソフトウェア(自社利用)その他5年

機械装置・鉄骨造は一律に決まらない

機械装置は業種ごとに耐用年数が定められており、3年程度から14年以上まで幅広く分かれています。また鉄骨造(軽量鉄骨など)の建物は、骨格材の肉厚によって22年から38年まで変わります。これらは「○年」と一律に言えないため、設備や鉄骨造の建物を取得した場合は、業種・構造に応じて耐用年数表を確認する必要があります。中古資産を買った場合は、見積りや簡便法で耐用年数を計算する別のルールもあります。

期中に買ったら月割

減価償却費は事業年度ごとに計算しますが、年度の途中で取得した資産は、事業に使い始めた月から期末までの月数で月割します。基準になるのは「取得した日」ではなく「事業の用に供した日(実際に使い始めた日)」です。

取得初年度の償却費(月割)

初年度の償却費 = 年間の償却額 × 事業供用月数 ÷ 12

(事業供用月数は使い始めた月から期末までの月数。1か月未満は切上げ)

※一括償却資産は月割不要で取得価額÷3

たとえば3月決算の法人が1月に使い始めた資産は、初年度はその年の1〜3月の3か月分だけを償却します。買っただけで倉庫に置いたまま使っていない資産は、まだ償却を始められない点に注意します。

定額法と定率法の違い(初年度に多く落とせるのは定率法)

耐用年数にわたって償却する場合、計算方法には定額法定率法の2種類があります。違いは「経費を計上するタイミング」で、最終的に損金になる総額(取得価額から備忘価額1円を引いた額)はどちらでも同じです。早く経費化したいなら定率法、平準化したいなら定額法、という意思決定軸で考えます。

定額法:毎年同額

定額法は、取得価額に「定額法の償却率」を掛けた同じ額を毎年償却します(最後の年は備忘価額1円を残します)。償却率は耐用年数ごとに国税庁の償却率表で決まり、たとえば耐用年数10年なら定額法償却率は0.100です。

定額法の各年の償却費

各年の償却費 = 取得価額 × 定額法償却率

(耐用年数10年なら償却率0.100 → 毎年「取得価額の10%」)

※最後は1円(備忘価額)を残して償却終了

建物や建物附属設備、構築物、ソフトウェアなどは、後述のとおり定額法しか選べません。計算がシンプルで、毎年の損益への影響が一定なのが特徴です。

定率法(200%定率法):未償却残高×償却率

定率法は、まだ償却していない残り(期首未償却残高)に「定率法の償却率」を掛けて計算します。買った直後は残高が大きいため償却費も大きく、年を追うごとに残高が減って償却費も小さくなります。平成24年4月1日以後に取得した資産は「200%定率法」が適用され、耐用年数10年なら定率法償却率は0.200です。

定率法(200%定率法)の各年の償却費

各年の償却費 = 期首未償却残高 × 定率法償却率

(耐用年数10年なら償却率0.200 → 初年度は取得価額の20%)

※調整前償却額が「償却保証額」を下回る年から、

 改定取得価額 × 改定償却率 で同額に切替(1円まで償却)

後半は「同額償却」に切り替わる

定率法は残高に率を掛け続けると永遠に1円に届かないため、途中から計算方法が切り替わります。各年の調整前償却額(残高×償却率)が「償却保証額(取得価額×保証率)」を下回った年から、その年の期首残高を「改定取得価額」として改定償却率を掛けた同額を毎年償却し、最後に備忘価額1円を残します。償却率・保証率・改定償却率は耐用年数ごとに国税庁の表で決まっており、実務では会計ソフトや税理士が表に基づいて自動計算します。仕組みとして「最初は多く、後半は同額で1円まで」と押さえておけば十分です。

どちらも最終的な償却総額は同じ。タイミングの違い。出典:国税庁No.2106。
観点定額法定率法(200%定率法)
毎年の償却費毎年同額初年度が大きく年々小さくなる
初年度に多く落とせるか△ 平準化○ 早く経費化できる
計算シンプル保証額・改定償却率で後半切替
損金になる総額同じ(取得価額−1円)同じ(取得価額−1円)

法人の償却方法の選び方と届出

法人がどの償却方法を使うかには、選べる資産と、法律で決まっている資産があります。まず押さえるべきは次の2点です。

出典:法人税法施行令48条・48条の2、国税庁No.5409。令和8年度(2026年)時点。
資産使える償却方法
建物(平成19年4月1日以後取得)定額法のみ(選択不可)
建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後取得)定額法のみ(選択不可)
ソフトウェアなど無形固定資産定額法
機械装置・車両・器具備品など(上記以外の有形資産)定率法・定額法から選択(届出なしは定率法)

法人の「法定償却方法」は定率法(届出なしの場合)

機械装置・車両・器具備品など選択できる資産について、法人が何も届け出ないと「定率法」が適用されます(これを法定償却方法といいます)。定額法を使いたい場合は、「減価償却資産の償却方法の届出書」を、設立後最初の事業年度の確定申告期限までに税務署へ提出します(国税庁No.5409)。

いったん採用した償却方法を変更するには「償却方法の変更承認申請書」を、変更したい事業年度開始の日の前日までに提出する必要があり、採用してから3年を経過していないと原則として承認されません(国税庁No.5407)。最初の選択が後々まで影響するため、設立時に方針を決めておくのが安心です。

選び方の目安は、早く経費化して当期の利益を圧縮したいなら定率法、損益を平準化したいなら定額法です。ただし建物のように定額法しか選べない資産も多く、実務では会計ソフトの設定や税理士の助言に沿って決めるのが一般的です。申告書での記載は法人税申告書の書き方(別表十六)で確認できます。

よくある質問(FAQ)

パソコンは一括で経費にできますか?

取得価額によります。10万円未満のパソコンなら、買った年に全額を損金にできます(法人税法施行令133条)。10万円以上でも、青色申告の中小企業者等であれば「少額減価償却資産の特例」を使い、30万円未満(令和8年4月1日以後に取得する分は40万円未満)の資産を全額その年の損金にできます(租税特別措置法67条の5・年間合計300万円まで)。この特例を使わない場合、パソコン(サーバー用以外)の法定耐用年数は4年で、4年にわたって減価償却します。なお10万円未満の資産は、もともと全額損金にできるため、この中小特例の対象には含まれません。

減価償却の定額法と定率法はどちらが得ですか?

「得」を初年度に多く経費を計上できることと考えるなら、一般に定率法のほうが早い時期に多く償却できます。定率法は未償却残高に一定の償却率を掛けるため、購入直後の償却費が大きく、年を追うごとに減っていきます。一方、定額法は毎年同じ額を償却するため、平準化されます。ただし耐用年数の全期間で見れば、最終的に損金になる総額は同じ取得価額です(備忘価額1円を残すまで)。利益が大きく出ている年に早く経費化したいなら定率法が向く傾向がありますが、建物や建物附属設備など定額法しか選べない資産もあります。

20万円未満の資産はどう処理するのがよいですか?

10万円以上20万円未満の資産は、選択肢が複数あります。①通常どおり耐用年数で減価償却する、②一括償却資産として取得価額を3年で均等償却する(法人税法施行令133条の2)、③青色申告の中小企業者等なら少額減価償却資産の特例で全額その年の損金にする(措置法67条の5)、のいずれかです。一括償却資産は月割が不要で、年度の途中に買っても取得価額の3分の1ずつを3年で償却できます。また一括償却資産は償却資産税(固定資産税の一種)の課税対象外になるため、台数が多い場合に有利になることがあります。どれを選ぶかは利益の状況や償却資産税も含めて判断します。

減価償却は必ずしなければいけませんか?

法人の場合、減価償却費は「損金経理」した金額のうち償却限度額までが損金になります。つまり法人は、その年にいくら償却するかをある程度任意に決められ、限度額の範囲内で償却費を計上しない(償却を見送る)こともできます。赤字の年に償却費を計上しても税金は減らないため、利益が出た年に償却を寄せるといった調整の余地があります。ただし計上しなかった分の償却費は翌期以降に繰り越せますが、限度額を超えて一度に取り戻すことはできません。個人事業主は減価償却が強制(必須)ですが、法人は任意償却という違いがあります。

少額特例の「40万円未満」はいつから使えますか?

中小企業者等の少額減価償却資産の特例(措置法67条の5)の上限額は、令和8年4月1日以後に取得する資産から「1個40万円未満」に引き上げられます(改正前は30万円未満)。それより前に取得した資産は従来どおり30万円未満が上限です。いずれの場合も、青色申告の中小企業者等であること、年間の取得価額の合計が300万円以下であること、別表十六(7)を申告書に添付することなどの要件があります。10万円未満の資産はこの特例を使うまでもなく全額損金にできるため、特例の対象は10万円以上の資産です。

まとめ・次のアクション

法人の減価償却は、「いくらの資産か」で処理が分岐し、少額処理を選ばない資産は耐用年数で償却するのが基本の流れです。要点を整理します。

この記事のまとめ

10万円未満 … 買った年に全額損金(全法人)

10万〜20万円未満 … 一括償却資産で3年均等(償却資産税の対象外)

30万円未満(令和8年4月以後40万円未満) … 中小の少額特例で全額損金(青色・年300万円まで)

それ以上 … 耐用年数で償却(早く落とすなら定率法/平準化なら定額法)

建物・建物附属設備・構築物・ソフトは定額法のみ

次のステップとして、減価償却費を申告書に反映する方法は法人税申告書の書き方(別表十六)で、決算・申告全体の流れは法人決算・申告の流れで確認できます。取得価額や耐用年数の判定、定率法の切替計算は手作業だと負担が大きいため、固定資産台帳のある会計ソフトに任せ、判断に迷う部分だけ税理士に確認するのが現実的です。

出典・編集情報

このページは以下の法令・公的資料を一次ソースとして作成しています。内容は令和8年度(2026年)時点の標準的な制度に基づきます。

執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月5日

内容は令和8年度(2026年)の標準的な制度に基づく一般的な解説で、個別の事案への適用を保証するものではありません。耐用年数は資産の構造・用途・細目によって細かく分かれ、本文に記載した代表値以外も多数あります。償却率・保証率・改定償却率は耐用年数ごとに国税庁の表で定められています。中古資産・特別償却・グループ通算など本文で触れていない制度もあり、具体的な処理は税務署または税理士にご確認ください。

本ツールは令和8年度(2026年)の税率・基準をもとに計算しています。最新の情報は各省庁のWebサイト等でご確認ください。