会社を設立すると、個人とは別に法人名義の印鑑が必要になります。法人では用途に応じて実印・銀行印・角印・ゴム印の4種類を使い分けるのが一般的で、このうち登記申請に必須なのが法人実印(代表者印)です。
ここでは、法人に必要な印鑑4種の役割と使い分け、印鑑届出書による法人実印の登録、3点セットの作成費用相場、電子契約・電子定款との関係、注文時の注意点を整理します。後半では「コスト重視」「標準」「電子契約中心」のタイプ別の揃え方も掲載しています。
この記事の前提と免責
- 費用相場は2026年時点の一般的な目安です。素材・彫り方・店舗により変動します
- 印鑑の届出は登記のオンライン申請に限り任意化されていますが、印鑑証明書が必要な場面が多いため実務上は登録するのが一般的です
- 掲載している印鑑の種類・使い分けは一般的な実務慣行であり、業種・取引形態によって運用が異なる場合があります
結論:登記に必須なのは法人実印・実務では3点セットで揃える
結論を先に出します。会社の印鑑は次のように考えると整理しやすくなります。
会社の印鑑・1分で結論
- 登記に必須なのは法人実印 → 書面の印鑑届出で法務局に登録(オンライン申請では任意化)
- 実務で使う印鑑は4種 → 実印(登記・重要契約)・銀行印(口座取引)・角印(請求書等)・ゴム印(住所記入の省力化)
- 定番は3点セット → 実印・銀行印・角印をまとめて作成。費用はおおむね¥5,000〜¥30,000
- 用途は分ける → 実印を兼用しない。偽造・紛失リスクを抑えるため使用機会を限定
- 用意のタイミング → 法人実印は登記申請まで、銀行印は口座開設まで、角印・ゴム印は設立後すぐ
印鑑は会社設立の必要書類と並んで設立準備の早い段階で揃えておきたい項目です。設立全体の流れは会社設立の流れ完全ガイドを参照してください。
法人に必要な印鑑4種(実印・銀行印・角印・ゴム印)
法人で使う印鑑は、用途に応じて主に4種類あります。それぞれ役割と使う場面が異なります。
| 印鑑の種類 | 主な用途 | 形状の目安 | 必須度 |
|---|---|---|---|
| 法人実印(代表者印) | 登記申請・重要契約・公的書類 | 丸型・直径18mm前後(二重丸) | 登記に必須 |
| 銀行印 | 法人口座の開設・取引 | 丸型・直径16.5〜18mm | 口座開設で必要 |
| 角印(社印) | 請求書・見積書・領収書・社内文書 | 角型・一辺21〜24mm | 実務で頻用 |
| ゴム印(住所印) | 住所・社名・代表者名の記入省力化 | 長方形・組み合わせ式が多い | 任意・あると便利 |
法人実印(代表者印)
法人実印は、法務局に登録する最も重要な印鑑です。登記申請(書面の場合)・重要な契約・公的書類の提出に使います。一般的には外周に商号、内側に「代表取締役印」「代表社員印」などの役職名を彫った二重丸の形状で、直径18mm前後が定番です。使用機会を限定し、厳重に保管するのが原則です。
銀行印
銀行印は法人口座の開設・取引に使う印鑑です。実印と兼用も可能ですが、偽造・紛失リスクの分散と、経理担当者に銀行印だけ預けられるようにするため、実印とは別に用意するのが一般的です。法人口座開設の流れは法人口座開設完全ガイドで解説しています。
角印(社印)
角印は請求書・見積書・領収書・社内文書などに押す、日常業務で最も使用頻度が高い印鑑です。会社名を四角い枠に彫ったもので、法的な登録は不要です。実印のように厳重管理する必要はなく、経理・営業の実務で気軽に使えるのが特徴です。
ゴム印(住所印)
ゴム印は会社名・住所・電話番号・代表者名などを記入する手間を省くための印鑑です。各項目を組み合わせて使えるパーツ式が便利で、封筒・各種申込書・伝票への記入を効率化できます。必須ではありませんが、設立後の事務作業を大きく減らせます。
印鑑届出書による法人実印の登録
法人実印は、設立登記の申請時に印鑑届出書を提出して法務局に登録します。登録すると、設立後に会社の印鑑証明書を取得できるようになり、法人口座開設・不動産取引・各種契約で使えます。
印鑑届出のポイント
- 提出先:設立登記を申請する法務局(登記申請と同時が一般的)
- 記載事項:会社の商号・本店・代表者名・届け出る印鑑の押印
- 添付書類:代表者個人の印鑑証明書(市区町村発行・通常3か月以内)
- オンライン申請:登記のオンライン申請に限り、印鑑の届出は任意化されている
- 実務上の扱い:印鑑証明書が必要な場面が多いため、実印を登録するのが一般的
印鑑届出は任意化されたが、実務では登録が一般的
2021年以降、登記のオンライン申請に限って印鑑の届出が任意化され、法人実印を登録せずに設立登記を完了することも制度上は可能になりました。ただし、印鑑証明書は法人口座開設・不動産取引・自動車登録・重要契約など設立後の多くの場面で求められるため、実務上は法人実印を登録しておくのが一般的です。登記申請の方法(窓口・郵送・オンライン)は会社設立の流れ完全ガイドのSTEP4で解説しています。
法人実印は登記申請までに、銀行印は口座開設までに用意が必要です。実印・銀行印・角印の3点は同じ専門店でまとめて注文すると割安になることが多く、納期も一度で済みます。即日出荷に対応する店舗もあるため、設立日に間に合わせたい場合は納期を確認しておくと安心です。
作成費用相場(3点セット ¥5,000〜¥30,000)
会社の印鑑の費用は、素材と彫り方によって幅があります。実印・銀行印・角印の3点セットでおおむね¥5,000〜¥30,000が目安です。
| 素材 | 3点セットの目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 樹脂・アクリル | ¥5,000前後〜 | 最安・軽量。耐久性はやや劣る |
| 本柘(ほんつげ) | ¥8,000〜¥15,000 | 定番の木材系。手頃で扱いやすい |
| 黒水牛 | ¥10,000〜¥20,000 | 定番の角系。重厚感と耐久性のバランス |
| チタン | ¥20,000〜¥40,000 | 最高クラスの耐久性。割れにくい |
| 象牙 | ¥30,000〜 | 高級素材。在庫・規制に注意 |
彫り方は機械彫りより手彫り仕上げの方が高価になります。会社の印鑑は長く使うため、割れ・欠けに強い素材(黒水牛・チタン等)を選ぶと買い替えのリスクを抑えられます。コストを最優先するなら樹脂・本柘の3点セットから始める選び方もあります。
電子契約・電子定款との関係
電子契約・電子署名は取引先との契約書で急速に普及していますが、印鑑(特に実印と印鑑証明書)が今も必要な場面は残っています。
| 場面 | 印鑑 / 電子の扱い |
|---|---|
| 設立登記(書面申請) | 法人実印が必要(印鑑届出) |
| 設立登記(オンライン申請) | 電子署名で可・印鑑届出は任意化 |
| 定款 | 電子定款にすれば印紙税¥40,000が不課税 |
| 法人口座開設 | 銀行印・実印(印鑑証明書)が必要なことが多い |
| 取引先との契約書 | 電子契約サービスの普及で電子署名が増加 |
| 不動産取引・公的書類 | 実印・印鑑証明書が必要な場面が残る |
定款は電子定款にすることで印紙税¥40,000を不課税にできます(詳細は電子定款 メリット・作り方)。一方、登記・口座開設・不動産取引などでは実印が引き続き必要なため、最低限法人実印と銀行印は用意しておき、角印・ゴム印は業務量に応じて揃えるのがバランスの良い進め方です。
注文時の注意点
会社の印鑑を注文する際は、次の点に注意するとやり直しを防げます。
注文前のチェックポイント
- サイズ規定:法人実印は商業登記規則第9条第3項により「一辺1cmの正方形に収まらず、一辺3cmの正方形に収まる」サイズが必要(1cm四方に収まる小さい印・3cm四方に収まらない大きい印はいずれも不可)
- 商号の確定:印鑑に彫る社名は登記する商号と完全に一致させる(注文前に商号を確定)
- 会社形態の表記:「代表取締役印」(株式会社)か「代表社員印」(合同会社)かを正しく指定
- 納期の確認:設立日に間に合わせるなら即日・短納期対応の店舗を選ぶ
- 素材と保証:割れ・欠けに対する保証期間がある店舗だと長く安心して使える
商号確定前に発注しない
印鑑には登記する商号をそのまま彫るため、商号が未確定のまま発注すると作り直しになります。商号は同一住所での同一商号が登記できない・使える文字に制限があるなどの制約があるため、登記可能な商号を確定させてから印鑑を発注してください。必要書類との関係は会社設立の必要書類リストで整理しています。
タイプ別の揃え方
タイプ1:コスト重視(最小構成)
費用を抑えたい1人法人向け
- ✓ 樹脂・本柘の3点セット(¥5,000〜¥10,000程度)から始める
- ✓ 法人実印・銀行印・角印を最低限揃える
- ✓ ゴム印は事務量が増えてから追加
- ※ 長く使うなら耐久性のある素材への買い替えも検討
- → 設立コストを最小化したいスタートアップ向け
タイプ2:標準(実印・銀行印・角印+ゴム印)
一般的な設立の定番構成
- ✓ 黒水牛・チタンなど耐久性のある素材の3点セット
- ✓ ゴム印(住所印)も加えて事務作業を効率化
- ✓ 実印は使用機会を限定し厳重保管
- ✓ 銀行印は経理担当に預けられるよう実印と分ける
- → 取引・事務が日常的に発生する標準的な法人向け
タイプ3:電子契約中心(最低限の物理印鑑)
電子化を進める事業向け
- ✓ 取引先との契約は電子契約サービスを活用
- ✓ 定款は電子定款で印紙税¥40,000を不課税に
- ✓ 物理印鑑は法人実印・銀行印の2本を最低限用意
- ✓ 角印は電子角印(PDFに押印画像)で代替する場面も
- → オンライン完結型・ペーパーレス志向の法人向け
迷ったら「実印・銀行印・角印の3点セット」
多くの設立では、実印・銀行印・角印の3点セットを耐久性のある素材でまとめて作るのが費用と実用性のバランスに優れます。ゴム印は事務量に応じて追加し、電子契約は導入できる場面から段階的に取り入れると、印鑑コストと事務効率の両立がしやすくなります。
よくある質問(FAQ)
会社設立に印鑑は必ず必要ですか?
登記申請の方法によって変わります。書面で印鑑届出を行う場合は法人実印が必須です。一方、2021年以降は登記のオンライン申請に限り印鑑の届出が任意化され、法人実印を登録せずに設立登記を完了することも制度上は可能になりました。ただし、印鑑証明書は法人口座の開設・不動産取引・自動車登録・各種契約など設立後のさまざまな場面で求められるため、実務上は法人実印を登録しておくのが一般的です。さらに銀行印・角印・ゴム印も日常業務で頻繁に使うため、設立の段階で印鑑をまとめて用意しておくと設立後の手続きがスムーズに進みます。
実印・銀行印・角印は1本で兼用できますか?
物理的には兼用できますが、実務上はおすすめしません。法人実印は登記・重要契約に使う最も重要な印鑑で、紛失・盗難・偽造のリスク管理のために使用機会を限定するのが原則です。これを銀行印や日常の角印と兼用すると、押印機会が増えて偽造・悪用のリスクが高まり、紛失時の影響範囲も広がります。一般的には「実印=登記・重要契約」「銀行印=口座取引」「角印=請求書・見積書・領収書」と用途を分け、それぞれ別の印鑑を用意します。設立時に実印・銀行印・角印の3点セットで揃えるのが定番です。
会社の印鑑の作成費用はどれくらいですか?
素材と彫り方によって幅があります。実印・銀行印・角印の3点セットでおおむね¥5,000〜¥30,000が目安です。最も安いのは樹脂・アクリル素材で、黒水牛・本柘(ほんつげ)などの定番素材が中位、チタン・象牙などの高級素材になると価格が上がります。彫り方も、機械彫りより手彫り仕上げの方が高価になります。会社の印鑑は長く使うものなので、耐久性のある素材を選ぶと割れ・欠けのリスクを抑えられます。即日出荷に対応する専門店もあり、設立日に間に合わせたい場合は納期も確認しておくと安心です。
電子契約が普及しても会社の印鑑は必要ですか?
必要な場面は残ります。電子契約・電子署名は取引先との契約書では急速に普及していますが、登記申請(書面の場合)・法人口座開設・不動産取引・公的書類など、印鑑(特に実印と印鑑証明書)が今も求められる場面は少なくありません。一方、定款は電子定款にすることで印紙税¥40,000を不課税にでき、社内文書や一部の取引は電子化が進んでいます。今後は「電子化できる書類は電子で、印鑑が必要な書類は実印で」という併用が現実的です。最低限、法人実印と銀行印は用意しておき、角印・ゴム印は業務量に応じて揃えるのがバランスの良い進め方です。
印鑑はいつまでに用意すればいいですか?
法人実印は登記申請までに用意します。書面で印鑑届出を行う場合、登記申請時に法人実印を法務局へ登録するため、申請日までに作成が必要です。銀行印は法人口座開設までに、角印・ゴム印は設立後の請求書発行などに合わせて用意すれば間に合います。ただし、実印・銀行印・角印は同じ専門店でまとめて注文すると割安になることが多く、納期も一度で済むため、設立準備の段階で3点セットをまとめて作っておくのが効率的です。会社設立の全体の流れは会社設立の流れ完全ガイドで5ステップに整理しています。
まとめ:登記前に法人実印・口座開設までに3点セットを
会社の印鑑のポイントをまとめます。
会社の印鑑・最終チェックリスト
- 法人に必要な印鑑は4種:実印(登記・重要契約)・銀行印(口座取引)・角印(請求書等)・ゴム印(住所記入)
- 登記に必須なのは法人実印:書面申請は印鑑届出で登録(オンライン申請では任意化)
- 用途は分ける:実印を兼用せず、偽造・紛失リスクを抑える
- 費用相場:実印・銀行印・角印の3点セットでおおむね¥5,000〜¥30,000
- 用意のタイミング:法人実印は登記申請まで、銀行印は口座開設まで、角印・ゴム印は設立後すぐ
- 電子化:定款は電子定款で印紙税¥40,000不課税。実印・銀行印は引き続き必要な場面が残る
印鑑は会社設立の流れのSTEP1(設立準備)で揃えておくと、STEP4(登記申請)・設立後の法人口座開設がスムーズに進みます。設立後にやることの全体像は会社設立後やること完全ガイドを参照してください。
実印・銀行印・角印をまとめて用意したい場合は、会社設立向けの印鑑3点セットを扱う専門店で一括注文できます。即日出荷に対応する店舗もあるため、設立日に間に合わせたい場合は納期を確認のうえ検討してください。
出典・編集情報
一次ソース
- 商業登記規則 第9条(印鑑の提出・印鑑の大きさ等)。※印鑑提出義務を定めていた商業登記法第20条は令和3年(2021年)2月15日に廃止され、現在は登記のオンライン申請に限り印鑑届出が任意化されています
- 法務省「商業・法人登記の申請手続」(印鑑届出・印鑑証明書) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00001.html
- 法務省「登記・供託オンライン申請システム」(印鑑届出の任意化) https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/
- 国税庁タックスアンサー No.7140「印紙税額の一覧表」(定款の印紙税) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm
関連リンク
編集:法人化ナビ編集部 / 公開:2026年5月31日 / 最終更新:2026年5月31日
本記事は法令一次ソース(商業登記法・商業登記規則・法務省・国税庁)と印鑑に関する一般的な実務情報に基づいて作成しています。費用相場・印鑑の使い分けは一般的な目安であり、最新の手続き・価格は各官公庁・印鑑専門店でご確認ください。