役員貸付金とは|認定利息・損金・解消法をわかりやすく解説【令和8年度】

役員貸付金は、会社が役員個人に貸し付けたお金。無利息・低利で貸すと役員に給与として課税される「認定利息」が論点になります。基準となる利率(令和7年中は年0.9%)、年5,000円以下なら課税なしの取扱い、銀行融資・税務調査・相続での3つのデメリット、報酬増額・退職金相殺・債権放棄・資産売却の解消法4つまで、一次ソース付きで整理します。令和8年度の法令準拠。

執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月1日

役員貸付金で押さえる4点

無利息・低利で貸すと給与課税。融資・調査・相続でも不利に働きやすい。

  • 年0.9% 認定利息の基準利率 令和7年中の利率(令和8年中は未公表)
  • 年5,000円以下 課税されない利息差額 これ以下なら経済的利益は課税対象外
  • 3つ 主なデメリット 融資審査・税務調査・相続評価
  • 4つ 主な解消法 報酬増額・退職金相殺・債権放棄・資産売却
役員貸付金とは:認定利息・損金・解消法を解説するアイキャッチ(令和8年度)

結論:役員貸付金は「認定利息」と「解消の難しさ」が論点

役員貸付金とは、会社が役員個人に貸し付けたお金のことです。立替経費の精算漏れや、役員報酬とは別に会社の資金を私的に使った場合などに発生します。貸付け自体は違法ではありませんが、税務上は次の3点が論点になります。

役員貸付金で押さえる3点

  • 無利息・低利だと給与課税 — 本来の利息との差額が役員の給与(経済的利益)とみなされる(所得税基本通達36-49)。差額が年5,000円以下なら課税対象外
  • 放置すると不利に働きやすい — 銀行融資審査・税務調査・相続の3場面でマイナスに評価される傾向がある
  • 解消法は複数あるが事実次第 — 報酬増額・退職金相殺・債権放棄・資産売却の4つ。債権放棄は給与認定か寄附金かが事実関係で変わる

残高が大きいまま長期化すると解消の選択肢が狭まるため、早めに対応方針を決めておくのが実務的です。最適な解消法は会社の利益状況・役員報酬・相続予定で変わるため、税理士の個別診断が有効な領域です。

役員貸付金とは何か・なぜ発生するか

役員貸付金は、会社の貸借対照表に「役員に対する債権」として計上されます。中小・1人法人で発生しやすいのは、次のようなケースです。

役員貸付金が発生する主なケース

  • 立替経費の精算漏れ — 役員が会社の経費を立て替えたつもりが、逆に会社の資金を個人用に使い精算しきれていない
  • 私的な支出 — 法人カードや会社の口座から個人的な支出をして、役員報酬として処理しきれていない
  • 資金移動 — 役員報酬を抑える代わりに会社の資金を一時的に引き出している

役員報酬として支給すれば所得税・社会保険の対象になりますが、貸付金として処理すると一旦は課税されません。ただし「貸付け」である以上、本来は利息をつけて返済する必要があり、無利息・低利のままだと次章の認定利息が論点になります。

無利息・低利で貸すと給与課税される「認定利息」

会社が役員に無利息または低い利率で金銭を貸し付けた場合、本来受け取るべき利息と実際に受け取った利息との差額が、役員が受けた経済的利益(給与)とみなされ、所得税・住民税の課税対象になります(所得税法36条、所得税基本通達36-28・36-49、国税庁タックスアンサー No.2606)。

基準となる利率

認定利息の計算に使う利率は、貸付けの原資によって変わります。

出典:国税庁タックスアンサー No.2606(金銭を貸し付けたとき)
貸付けの原資適用する利率
会社が金融機関などから借り入れた資金を転貸した場合その借入金の利率
上記以外(会社の自己資金など)国税庁が定める利率(令和7年中は年0.9%)

令和8年中の利率は更新後に確認を

国税庁が定める利率は年ごとに見直されます。令和7年中は年0.9%ですが、令和8年(2026年)中に適用される利率はこの記事の更新時点では公表されていません。令和8年分の認定利息を計算する場合は、国税庁が公表する最新の利率を確認してください。

年5,000円以下なら課税されない

上記の利率で計算した利息相当額と、実際に役員から受け取った利息との差額が1年間で5,000円以下であれば、経済的利益はないものとして課税されません(国税庁タックスアンサー No.2606)。少額の貸付けであればこの範囲に収まることもありますが、残高が大きいと差額が5,000円を超え、給与課税の対象になります。

認定利息を受け取った場合の損金算入の扱い

会社が役員から認定利息を受け取れば、それは会社側の受取利息(益金)になります。給与課税を避けるために役員報酬を増やして利息相当額を補おうとする発想もありますが、ここで損金算入のルールが関係してきます。

役員報酬を損金算入するには、毎月同額を支給する定期同額給与などの形式要件を満たす必要があります(法人税法34条1項、国税庁タックスアンサー No.5211)。認定利息は貸付金の元本が返済で減れば月々変動しうるため、これに連動して役員報酬を動かすと定期同額給与に該当するかは微妙です。損金不算入になるおそれもあるため、報酬設計と貸付金の解消をどう組み合わせるかは、税理士に確認しながら進めるのが安全です。役員報酬の損金算入の全体像は役員報酬の損金算入で解説しています。

役員貸付金の3つのデメリット

役員貸付金には、税法上の認定利息以外にも、放置することで生じうる実務上のデメリットがあります。法令上のルールと、融資・調査の実務慣行を区別して整理します。

①②は融資・調査の実務慣行、③は相続税法22条・財産評価基本通達に基づく取扱い
デメリット内容性質
①銀行融資審査でマイナス評価決算書上の役員貸付金は「社外流出した資金」とみられ、審査で不利に評価される傾向がある融資実務の慣行(法令ではない)
②税務調査での指摘貸付金の実在性・認定利息の計上漏れ・本来は役員賞与ではないかといった点が指摘されやすい調査実務の慣行(法令ではない)
③相続時に会社の株式評価を押し上げる会社が持つ役員貸付金(債権)は額面で評価され、その分だけ会社の純資産=株式の評価額が高くなる。オーナー役員の死亡時にこの株式を相続すると相続税の負担が増えうる相続税法22条・財産評価基本通達204(法令・通達)

①②は「傾向」、③は法令上の取扱い

①銀行融資と②税務調査は、法令で直接定められたペナルティではなく、実務上そう扱われやすいという傾向です。一方、③は相続税法22条(財産は時価で評価)と財産評価基本通達204に基づく取扱いです。会社が役員に対して持つ貸付金(債権)は、回収不能などの事情がない限り原則として額面(元本)で評価され、その分だけ会社の純資産が大きくなります。会社の株式は純資産などをもとに評価されるため、貸付金が大きいほど株式の評価額も高くなり、オーナー役員の死亡時に株式を相続する相続人の負担が増えることがあります。会社の財政状態が悪く実際には回収しにくい貸付金でも、原則として額面で評価される点に注意が必要です。

役員貸付金を解消する4つの方法

役員貸付金を減らす・なくす方法は、大きく次の4つに整理できます。どれを選ぶかで税負担が変わり、特に債権放棄は扱いを誤ると重い課税につながるため、慎重な判断が必要です。

役員貸付金の解消法4つ

  • ①役員報酬を増額して返済する — 増やした報酬の手取りから貸付金を返済する。報酬増額には所得税・社保がかかり、定期同額給与の改定ルール(期首3か月以内など)の制約も受ける
  • ②役員退職金と相殺する — 役員退職のタイミングで、支給する退職金と貸付金を相殺する。退職所得は税負担が軽い区分のため、まとまった残高の解消に向くことがある
  • ③債権放棄する — 会社が貸付金を放棄する。ただし役員賞与の認定(源泉課税)や寄附金扱い(損金不算入)になるおそれがあり、どちらになるかは事実次第(法人税法34条・37条、No.5281)
  • ④役員個人の資産を会社に売却する — 役員が持つ不動産などを会社に売り、その代金で貸付金を返済する。売却益への課税や適正価格の検討が必要

③債権放棄は「給与認定か寄附金か」が事実次第

会社が役員貸付金を放棄すると、放棄額が役員賞与と認定されて源泉所得税の対象になるか、寄附金として損金不算入になるおそれがあります(法人税法34条・37条、国税庁タックスアンサー No.5281)。どちらの扱いになるかは放棄の経緯・合理性といった事実関係で変わり、「放棄すれば終わり」とはならない点に注意が必要です。実行前に必ず税理士に相談してください。

①の報酬増額は役員報酬の決め方、②の退職金相殺は役員退職金の損金算入で、それぞれ前提となる仕組みを解説しています。なお、役員と会社の貸し借りは金銭消費貸借契約書を作って条件を書面に残すのが基本です。契約書は金銭消費貸借契約書ジェネレーターでフォーム入力からコピペ作成できます。

よくある質問(FAQ)

役員貸付金に利息をつけないと、必ず課税されますか?

無利息または低い利率で貸し付けた場合、本来受け取るべき利息との差額が役員への給与(経済的利益)とみなされ、所得税・住民税の課税対象になります(所得税基本通達36-49)。ただし、利息相当額と実際に受け取った利息との差額が年間5,000円以下であれば課税されない取扱いがあります(国税庁タックスアンサー No.2606)。基準となる利率は、会社が金融機関などから借り入れて役員に転貸した場合はその借入利率、それ以外の場合は国税庁が定める利率を用います。

認定利息の基準利率は何%ですか?

会社が他から借り入れていない資金を役員に貸し付ける場合の基準利率は、令和7年中は年0.9%です。令和8年(2026年)中に適用される利率は、この記事の更新時点では国税庁から公表されていません。利率は年ごとに見直されるため、令和8年分の認定利息を計算する際は、国税庁が公表する最新の利率を確認してください。会社が金融機関などから借り入れて転貸した場合は、その借入利率を適用します(国税庁タックスアンサー No.2606)。

役員貸付金があると銀行融資に影響しますか?

法令で融資が制限されるわけではありませんが、金融機関は決算書上の役員貸付金を「事業に使われず社外に流出した資金」とみて、審査でマイナスに評価する傾向があると言われます。これは融資実務の慣行であって税法上のルールではありません。融資を予定している場合は、決算前に貸付金の解消を検討する余地があります。具体的な影響は金融機関や会社の状況で変わるため、顧問税理士や取引銀行に確認するのが確実です。

役員貸付金を会社が放棄(チャラに)したらどうなりますか?

会社が役員に対する貸付金(債権)を放棄すると、放棄した金額が役員への給与(賞与)と認定されて源泉所得税の対象になったり、寄附金として扱われて損金不算入になったりするおそれがあります(法人税法34条・37条、国税庁タックスアンサー No.5281)。どちらの扱いになるかは放棄の経緯や合理性など事実関係によって変わり、一律には決まりません。安易な債権放棄は課税リスクが大きいため、実行前に税理士に相談することをおすすめします。

役員が貸付金の利息を受け取ったら、確定申告は必要ですか?

同族会社の役員などが、その同族会社から貸付金の利子を受け取っている場合は、その金額が20万円以下であっても確定申告が必要とされています(国税庁タックスアンサー No.1900)。役員貸付金とは逆に、役員が会社にお金を貸して利息を受け取るケースなどが該当します。詳しくは役員(会社経営者)の確定申告が必要なケースで解説しています。

出典・編集情報

このページは以下の公的機関・法令の公表情報を一次ソースとして作成しています。

執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月1日

内容は令和8年度(2026年)の現行法令・通達に基づく一般的な解説で、個別の事案への適用を保証するものではありません。認定利息の基準利率は年ごとに見直され、債権放棄が役員給与の認定になるか寄附金になるかなどは事実関係によって判断が分かれます。具体的な役員貸付金の処理・解消にあたっては税理士にご相談ください。

本ツールは令和8年度(2026年)の税率・基準をもとに計算しています。最新の情報は各省庁のWebサイト等でご確認ください。