結論:役員も原則は年末調整で完結する
役員(会社経営者)も役員報酬という給与をもらう給与所得者です。そのため、所得税は原則として会社が行う年末調整で精算が完了し、自分で確定申告をする必要はありません。確定申告が必要になるのは、次章以降で整理する一定のケースに限られます。
役員の確定申告で押さえる3点
- 原則は年末調整で完結 — 役員も給与所得者なので、1社から役員報酬を受けているだけなら確定申告は不要
- 一定のケースだけ申告が必要 — 給与収入2,000万円超・副収入20万円超・複数社からの役員報酬で未年調分が20万円超・同族会社からの貸付金利子や賃貸料など(No.1900・No.1901)
- 同族会社の役員は例外に注意 — 会社から受ける貸付金利子・賃貸料は20万円以下でも申告が必要
確定申告が必要な役員のケース
給与所得者で確定申告が必要になる主なケースは、国税庁タックスアンサー No.1900に整理されています。役員に当てはまりやすいものを中心に見ていきます。
| ケース | 内容 |
|---|---|
| ①給与収入が2,000万円を超える | 年末調整の対象外になるため、自分で確定申告が必要 |
| ②給与1か所+他の所得が20万円超 | 1か所から給与を受けていて、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合 |
| ③2か所以上から給与を受けている | 複数社で役員を兼任し、年末調整されない給与と他の所得の合計が20万円を超える場合 |
| ④同族会社から貸付金利子・賃貸料を受ける | 同族会社の役員などが会社から利子・家賃などを受ける場合(20万円以下でも必要・次章で詳説) |
役員報酬が高額になると①に、会社とは別に不動産所得や副業所得があれば②に、複数の会社で役員を務めていれば③に該当しやすくなります。④は役員特有の論点のため、次章で詳しく解説します。
同族会社の役員特有のケース(20万円以下でも必要)
給与所得者には「給与以外の所得が20万円以下なら申告不要」という取扱いがあります。しかし、同族会社の役員などが、その同族会社から次のものを受け取っている場合は、その金額が20万円以下であっても確定申告が必要です(所得税法121条・所得税法施行令262条の2、国税庁タックスアンサー No.1901)。
20万円以下でも申告が必要になる、会社から受け取るもの
- 貸付金の利子 — 役員が会社にお金を貸して、その利息を受け取っている場合
- 資産の賃貸料 — 役員個人の不動産(自宅・土地など)を会社に貸して、家賃・地代を受け取っている場合
- 不動産以外の資産の賃貸料など — 役員個人が持つ機械・備品などを会社の事業用に貸して対価を受け取っている場合(貸付金の利子・資産の賃貸料に準じるもの)
した方が得なケース(還付)
確定申告の義務がない役員でも、申告することで納めすぎた所得税が戻ってくる(還付される)ことがあります。代表的なのは次の3つです。
| ケース | 内容 |
|---|---|
| 医療費控除 | 1年間の医療費が10万円を超える場合(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%を超える場合)に控除を受けられる |
| 住宅ローン控除(初年度) | 住宅ローンを組んだ初年度は確定申告が必要。2年目以降は年末調整で対応できる |
| ふるさと納税 | ワンストップ特例を使わない場合や、寄付先が6自治体以上(5団体超)の場合は確定申告で寄附金控除を受ける |
ふるさと納税は「6自治体以上」でワンストップ不可
ふるさと納税のワンストップ特例は、寄付先が5団体以内の場合に使えます。寄付先が6自治体以上(5団体を超える)になるとワンストップ特例が使えず、確定申告が必要です。また、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合は、ワンストップ特例を申請済みでも、確定申告でふるさと納税分を申告し直す必要があります。
申告期限と還付申告の期限
令和7年分(2025年分)の所得税の確定申告の期限は、次のとおりです。
令和7年分の確定申告のスケジュール
- 申告期限:2026年3月16日(月) — 例年は3月15日だが、令和7年分は3月15日が日曜日のため翌開庁日の3月16日が期限
- 受付開始:例年2月16日から
- 還付申告:その年の翌年1月1日から5年間 — 還付を受けるための申告は、期限後でも5年以内なら提出できる
納税が必要な申告は期限内に行う必要がありますが、還付申告は5年の余裕があります。過去に医療費控除などを申告し忘れていた場合でも、5年以内ならさかのぼって申告できる可能性があります。
よくある質問(FAQ)
役員(社長)は確定申告が必要ですか?
役員も給与所得者なので、原則は会社が行う年末調整で所得税の精算が完了し、確定申告は不要です。ただし、給与収入が2,000万円を超える場合は年末調整の対象外となり確定申告が必要です。また、給与以外の所得が20万円を超える場合、2か所以上から給与を受けている場合、同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料を受けている場合なども確定申告が必要になります(国税庁タックスアンサー No.1900)。
複数の会社で役員を兼任しています。確定申告は必要ですか?
2か所以上から給与を受けていて、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与・退職所得以外の各種所得の合計額が20万円を超える場合は確定申告が必要です(国税庁タックスアンサー No.1900)。複数社で役員報酬を受け取っている場合、年末調整は主たる1社でしか行えないため、従たる会社の役員報酬などを合算して申告するのが原則です。
会社に自宅を貸して家賃を受け取っています。20万円以下でも申告が必要ですか?
同族会社の役員などが、その同族会社から資産の賃貸料(家賃など)や貸付金の利子を受け取っている場合は、その金額が20万円以下であっても確定申告が必要です(所得税法121条・所得税法施行令262条の2、国税庁タックスアンサー No.1901)。給与所得者の「副収入20万円以下は申告不要」という取扱いの例外にあたります。役員社宅とは逆に、役員個人の資産を会社に貸すケースが該当します。
ふるさと納税をすると確定申告が必要ですか?
ふるさと納税先が5団体以内で、ワンストップ特例の申請をしている場合は、原則として確定申告は不要です。ただし、寄付先が6自治体以上(5団体を超える)になるとワンストップ特例が使えず、確定申告が必要になります。また、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合は、ワンストップ特例の申請をしていても確定申告でふるさと納税の寄附金控除を申告し直す必要があります。
令和7年分の確定申告はいつまでですか?
令和7年分(2025年分)の所得税の確定申告期限は、2026年3月16日(月)です。例年の期限は3月15日ですが、令和7年分は3月15日が日曜日にあたるため、翌開庁日の3月16日(月)が期限になります。受付開始は例年2月16日からです。なお、還付を受けるための申告(還付申告)は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
出典・編集情報
このページは以下の公的機関・法令の公表情報を一次ソースとして作成しています。
- 国税庁タックスアンサー No.1900(給与所得者で確定申告が必要な人)
- 国税庁タックスアンサー No.1901(同族会社の役員等で確定申告が必要な人)
- e-Gov 所得税法(第121条 確定所得申告を要しない場合)
- e-Gov 所得税法施行令(第262条の2 確定申告を要しない同族会社の役員等)
- 国税庁タックスアンサー No.1120(医療費を支払ったとき)
執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年6月1日
内容は令和8年度(2026年)の現行法令に基づく一般的な解説で、個別の事案への適用を保証するものではありません。確定申告の要否は所得の種類・金額・他の控除の有無によって変わります。具体的な申告の要否や手続きについては、税理士または所轄の税務署にご相談ください。