資本金の決め方完全ガイド|平均値・1円スタートの可否・消費税2年免除の境界

資本金の決め方を「会社法の規定」「中小企業庁データの平均値」「消費税2年免除の境界1,000万円」「法人税軽減税率・交際費1/2損金算入の境界1億円」の4軸で整理。1円資本金は法律上可能だが銀行口座開設・取引信用面で不利になる実務上のデメリットも一次ソース付きで解説します。

執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年5月27日

資本金の決め方の主要数値(令和8年度・2026年)

中央値は約¥1,000,000。消費税免除の境界は1,000万円未満、法人税軽減税率の境界は1億円以下。

  • 約¥1,000,000 中央値 中小企業庁データ
  • 法律上可能 1円OK 会社法27条・最低資本金廃止
  • 1,000万円未満 消費税免除境界 消費税法12条の2
  • 1億円以下 法人税軽減税率境界 中小法人15%
資本金の決め方完全ガイド:平均値・1円スタートの可否・消費税2年免除の境界を解説するアイキャッチ

会社設立時の資本金は会社法上の下限はなく、1円から設定可能です(会社法第27条第4号・最低資本金制度は2006年に廃止)。ただし「1円でいい」とは言えず、実務上の判断軸として消費税2年免税の境界1,000万円法人税軽減税率・交際費1/2損金の境界1億円銀行口座開設・取引信用面の3点を踏まえる必要があります。

ここでは、資本金の決め方を一次ソース(会社法・消費税法・法人税法・中小企業庁の白書データ)に基づいて整理します。中小企業庁データの資本金分布、1円資本金の実務上のデメリット、消費税2年免税の条件、許認可業種の最低資本金要件、設立後の増資・減資の手続き費用まで網羅し、後半の「タイプ別・あなたに合った資本金額」で読者の状況別の推奨額を提示します。

この記事の前提と免責

  • 金額・税率は2026年5月時点。消費税率・法人税率は税制改正で変動する可能性があるため、申込前に最新情報を国税庁等の公式サイトでご確認ください
  • 消費税2年免税は「資本金1,000万円未満」「インボイス未登録」「特定新規設立法人非該当」の3条件すべてを満たす必要があります
  • 許認可業種の最低資本金要件は業法・自治体条例で個別規定されており、本記事の表は代表例の抜粋です。許認可取得を予定している場合は所管官庁で最新要件を確認してください

結論:消費税2年免除のため1,000万円未満・運転資金として¥1,000,000前後が現実解

結論を先に出します。資本金額は次の3つの境界で判断できます。

資本金の決め方・1分で結論

  • 1,000万円「未満」(重要) → 消費税2年免税の境界(消費税法12条の2)。設立第1期・第2期の納税義務を免除される可能性。多くの中小設立はこの境界の下に収める
  • 1億円「以下」 → 中小法人税制優遇の境界(法人税法66条2項)。法人税軽減税率15%・交際費損金算入限度額800万円等の対象。設立規模では通常意識不要
  • ¥1,000,000前後(現実解) → 中小企業庁データの中央値帯。銀行口座開設・取引信用面で問題が出にくく、消費税免税メリットも享受可能
  • ¥1(最低) → 法律上可能だが、銀行口座開設・取引信用・運転資金不足の3つのデメリットあり

個人事業からの法人成りで運転資金規模が見えている場合は、その規模感に合わせて¥1,000,000〜¥5,000,000の範囲で設定する例が一般的です。許認可業種(建設業・派遣業・旅行業等)の場合は業法上の最低資本金または純資産要件があるため、所管官庁の規定を先に確認してください。

合同会社・株式会社の費用差や形態選びは合同会社設立費用の完全ガイド合同会社 vs 株式会社 完全比較、設立後の手続きは会社設立後やること完全ガイドを参照してください。

会社法上の最低資本金(廃止済み・1円から可能)

日本の会社法は2006年(平成18年)5月1日に施行された現行会社法で「最低資本金制度」を廃止しました。それ以前の旧商法では株式会社1,000万円・有限会社300万円という最低資本金が必要でしたが、現行会社法では下限規定がありません(会社法第27条第4号・「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」を定款に記載すればよい)。

会社法第27条の絶対的記載事項(株式会社)

株式会社の定款には次の事項を必ず記載しなければならない(=絶対的記載事項):

  • 1. 目的(事業内容)
  • 2. 商号(会社名)
  • 3. 本店の所在地
  • 4. 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  • 5. 発起人の氏名又は名称及び住所

第4号の「価額又はその最低額」には「最低資本金」という固定ラインがなく、1円でも1億円でも自由に設定できる点が重要です。

合同会社(LLC)も同様で、会社法第578条・第585条により最低資本金規定はありません。合同会社の場合は「社員の出資」という形で資本を集めますが、1社員1円からスタートできます。

1円資本金は可能か(法律上可・実務上の3つのデメリット)

法律上は1円資本金で会社設立可能ですが、実務上は次の3つのデメリットが生じます。

デメリット1:銀行口座開設の審査が厳しくなる

銀行(特にメガバンク:三菱UFJ・三井住友・みずほ)の法人口座開設審査では、資本金が極端に少額な法人は「事業実態が不明確」と判断される傾向があります。マネーロンダリング対策・反社会的勢力排除の観点から銀行の審査基準は近年厳格化しており、資本金¥1〜¥100,000程度では追加書類(事業計画書・取引先一覧・契約書等)の提出を求められたり、最悪の場合は審査否決されるケースが報告されています。

設立直後はネット銀行(GMOあおぞらネット銀行・住信SBIネット銀行・楽天銀行ビジネスアカウント)で口座を確保しつつ、半年〜1年の取引実績を作ってメガバンクに追加申請する流れが現実的になります。

デメリット2:取引先・物件オーナーからの信用が低下する

法人の資本金額は登記簿で公開される情報です(履歴事項全部証明書に明記)。取引先・賃貸オフィスのオーナー・銀行融資の審査担当者は登記簿を確認することがあり、資本金¥1〜¥100,000という極端な少額は「信用調査上のマイナス材料」になりやすくなります。

特に法人間取引(BtoB)で初取引の与信判断時、資本金額は「最低限の体力を示す指標」として参照されます。BtoC(個人消費者相手)であれば資本金額が取引判断に影響することは少なめですが、BtoB中心のビジネスモデルでは資本金¥1,000,000以上を確保しておくと取引開始時のハードルが下がります。

デメリット3:設立直後の運転資金が枯渇しやすい

資本金は「会社設立時の元手」であり、設立後の運転資金として取り崩して使うことができます。資本金¥1で設立すると、設立直後の事務所家賃・備品購入・印鑑作成・登記簿謄本取得等の初期費用(合計¥50,000〜¥150,000程度)を支払う原資が会社内になく、すべて代表者個人からの借入(役員借入金)で賄うことになります。

役員借入金は法人税法上は問題ありませんが、決算書の「短期借入金」または「長期借入金」として計上されるため、決算書を見た取引先・銀行から「資金繰りが綱渡り」と見られるリスクがあります。最低でも初期費用と3か月分の運転資金(合計¥500,000〜¥1,500,000)を資本金として用意するのが実務的です。

1円資本金が許容されるケース

逆に、次のいずれかに該当する場合は1円資本金も合理的選択になりえます:

  • 個人事業のまま事業実態は継続し、節税目的のみで法人を別立てするケース
  • 創業初期の試行錯誤段階で「とりあえず登記だけ済ませる」ペーパーカンパニー的運用
  • BtoC・オンライン完結型ビジネスで、銀行口座は最初からネット銀行のみ使う前提

これらに該当しない一般的な事業設立では、¥1,000,000前後の資本金を推奨します。

中小企業庁データの資本金分布(中央値¥1,000,000)

中小企業庁の開業実態調査によると、新規設立法人の資本金分布は次のような傾向にあります(直近年度の白書データに基づく概算)。

出典:中小企業庁 中小企業白書・開業実態調査(直近年度の概算値)
資本金区分構成比(概算)代表的な業種
¥1〜99万円約30%フリーランス法人成り・1人法人・SaaS等オンライン業
¥100〜299万円約25%個人事業からの法人成り・小規模サービス業
¥300〜499万円約15%小規模小売・飲食店・コンサル・士業
¥500〜999万円約15%中規模製造業・卸売・建設業(軽量級)
1,000万円以上約15%建設業・派遣業・旅行業等の許認可業種

中央値はおおむね¥1,000,000付近、平均値は¥3,000,000前後(大型の許認可業種が引き上げる)。¥1,000,000帯がもっとも一般的な選択肢と言える分布です。

ただし、これは「最も多い帯」であって「最適解」ではありません。次節以降で説明する消費税・法人税の境界線、許認可業種の要件、運転資金の目安に基づいて自身の状況に最適な金額を選ぶ必要があります。

消費税2年免税との境界(1,000万円未満)

資本金額の決定で最大の判断材料になるのが消費税の納税義務免除規定です。

免税の原則(消費税法第9条第1項)

消費税法第9条第1項により、基準期間(=前々事業年度)における課税売上高が¥10,000,000以下の事業者は消費税の納税義務が免除されます。新設法人は設立第1期・第2期に基準期間がない(=前々事業年度がそもそも存在しない)ため、原則として設立第1期・第2期は消費税免税になります。

資本金1,000万円以上の例外(消費税法第12条の2)

ただし、消費税法第12条の2により、設立時の資本金(または出資金)が¥10,000,000以上の新設法人は、基準期間がない第1期・第2期でも消費税の納税義務が発生します。

消費税2年免税の条件(4つすべて満たす必要あり)

1. 設立時の資本金が¥10,000,000「未満」(消費税法 第12条の2)

2. 適格請求書発行事業者(インボイス)に登録していない(消費税法 第57条の2)

3. 特定新規設立法人に該当しない(消費税法 第12条の3)

4. 課税事業者選択届出書を提出していない(消費税法 第9条第4項)

第1の条件が「資本金1,000万円未満」の境界線です。これが資本金額の決定で最重要視される理由で、設立時に「¥9,990,000」あるいは「¥9,999,000」といった¥10,000,000直前ギリギリの金額を設定する実務的なテクニックの根拠でもあります。

第12条の3「特定新規設立法人」の例外に注意

資本金1,000万円未満であっても、次の条件すべてに該当する新設法人は「特定新規設立法人」として免税対象から除外されます(消費税法第12条の3):

  • 新設法人の発行済株式・出資金の50%超を、課税売上高5億円超の他の法人(または特殊関係者)が直接・間接に保有
  • その他、当該特殊関係者の事業実態と新設法人が一定の関係にある場合

大企業の子会社設立や、高額所得者の親族の法人設立などはこの規定の対象になりやすいため、消費税免税を狙う場合は事前に税理士相談を推奨します。

インボイス制度の影響(免税メリットが消失するケース)

2023年10月のインボイス制度(適格請求書等保存方式)導入以降、消費税免税のメリットを取りにくいケースが増えています。

取引先が課税事業者(=自社の売上に消費税を上乗せして請求し、仕入で支払った消費税を控除する事業者)の場合、自社がインボイス未登録のままだと取引先側で仕入税額控除が制限されます(経過措置あり)。このため取引先からインボイス発行を求められ、自社をインボイス登録(=自動的に課税事業者化)するケースが多くなっています。

インボイス登録すると、たとえ資本金1,000万円未満でも設立第1期から課税事業者になるため、消費税の2年免税メリットは消失します。逆にBtoC(個人消費者相手)中心のビジネスモデルなら、取引先からインボイス発行を求められることは少なく、設立2期は免税のままで運用できる可能性が高くなります。

法人住民税均等割との境界(1,000万円・1億円)

法人住民税均等割(地方税法 第52条・第312条)は、所得や利益に関係なく毎期必ず発生する固定費です。赤字でも発生するため、設立時から維持コストとして織り込む必要があります。

出典:地方税法 第52条(道府県民税均等割)・第312条(市町村民税均等割)令和8年度時点
資本金等の額従業者数道府県民税市町村民税合計
1,000万円以下50人以下¥20,000¥50,000¥70,000
1,000万円以下50人超¥20,000¥120,000¥140,000
1,000万円超〜1億円以下50人以下¥50,000¥130,000¥180,000
1,000万円超〜1億円以下50人超¥50,000¥150,000¥200,000
1億円超〜10億円以下50人以下¥130,000¥160,000¥290,000
1億円超〜10億円以下50人超¥130,000¥400,000¥530,000

設立時の資本金が1,000万円を超えると、均等割が年¥70,000 → 年¥180,000と¥110,000増加します。これも資本金1,000万円未満を選ぶ実務的な理由の1つです。

東京23区内に本店を置く場合は都民税として一括徴収(市区町村役所への分は不要)。地方の市区町村では均等割の超過税率を採用している自治体もあり、実際の額は本店所在地の自治体条例で確認してください。

法人税軽減税率・交際費1/2損金の境界(1億円)

資本金1億円が法人税法上の「中小法人/大法人」の境界です。中小規模の設立で1億円超を設定するケースは稀ですが、各種優遇措置の理解として整理しておきます。

中小法人の法人税軽減税率(法人税法 第66条第2項)

出典:法人税法 第66条第2項・国税庁タックスアンサーNo.5759
区分所得800万円以下の部分所得800万円超の部分
資本金1億円以下の中小法人15%(時限措置)23.2%
資本金1億円超の大法人23.2%23.2%

所得800万円までは法人税率15%(中小法人)と23.2%(大法人)の差で年間最大¥656,000の差が生じます(800万円×(23.2% − 15%)= ¥656,000)。

交際費の損金算入限度額(措法 第61条の4)

出典:租税特別措置法 第61条の4・国税庁タックスアンサーNo.5265
区分損金算入限度額
資本金1億円以下の中小法人800万円/年 または 飲食費の50%のいずれか有利な方
資本金1億円超〜100億円以下飲食費の50%のみ損金算入可
資本金100億円超交際費は全額損金不算入

これらの優遇措置は資本金1億円「以下」の場合に適用されます。一般的な中小法人設立では1億円を超えることは稀ですが、知識として押さえておくと安心です。

許認可業種の最低資本金要件

会社法では最低資本金規定がなくても、業種ごとに業法・自治体条例で「実質的な最低資本金(純資産・基準資産)」要件が設定されている場合があります。

出典:建設業法・職業安定法・労働者派遣法・旅行業法・宅地建物取引業法(令和8年度時点)
業種必要資本金・純資産額根拠
一般建設業純資産 500万円以上建設業法 第7条第4号
特定建設業純資産 4,000万円以上、流動比率75%以上 等建設業法 第15条第3号
有料職業紹介事業純資産 500万円以上(事業所ごと)職業安定法 第32条第1号
一般労働者派遣事業純資産 2,000万円以上労働者派遣法 第7条
第一種旅行業基準資産 3,000万円以上旅行業法 第6条
第二種旅行業基準資産 700万円以上旅行業法 第6条
第三種旅行業基準資産 300万円以上旅行業法 第6条
不動産業(宅建業)営業保証金 1,000万円(または保証協会加入で60万円)宅地建物取引業法 第25条
古物商法定要件なし(許可制)古物営業法

「資本金」と「純資産」「基準資産」の違い

許認可業種の要件では「資本金」ではなく「純資産」「基準資産」が要件になっていることが多くあります:

  • 資本金:設立時に出資された金額(登記簿に記載される)
  • 純資産:資本金+準備金+利益剰余金 − 自己株式 等(直近の貸借対照表で計算)
  • 基準資産:旅行業特有の概念。資産から負債と営業保証金を控除したもの

設立直後は資本金=純資産になることが多いですが、開業前の赤字や借入次第で純資産が目減りするケースもあるため、許認可業種では設立資本金に余裕を持たせる設計が必要です。

上記以外にも風俗営業・酒類販売・食品製造等の業種で個別の財産的基礎要件があります。許認可取得を予定している場合は、所管官庁の最新要件を必ず事前確認してください。

設立後の増資・減資(手続きと費用)

設立時に決めた資本金は固定ではなく、事業の成長や経営判断に応じて増資(資本金を増やす)減資(資本金を減らす)が可能です。

増資の手続きと費用

増資の手続き(株式会社の場合)

  • 株主総会の特別決議:発行可能株式総数の範囲内で募集事項を決定
  • 新株式の発行:既存株主への割当 または 第三者割当 または 公募
  • 払込:払込期日までに払込金融機関へ振込
  • 変更登記:払込日から2週間以内に資本金額変更の登記
  • 登録免許税:増加した資本金の額×0.7%・最低¥30,000(登録免許税法 別表第一 第24号(一)ニ)

減資の手続きと費用

減資の手続き(株式会社の場合)

  • 株主総会の特別決議:減少する資本金の額と効力発生日を決定
  • 債権者保護手続き:官報公告+知れたる債権者への個別通知。最低1か月の異議申述期間(会社法第449条)
  • 変更登記:効力発生日から2週間以内
  • 登録免許税:¥30,000(登録免許税法 別表第一 第24号(一)ツ)

減資の典型ケース

減資が活用される典型シナリオは次の2つです:

  • 累積赤字の解消:資本金を取り崩して欠損金を補填し、決算書の見栄えを改善
  • 中小法人税制への復帰:資本金1億円超になった法人を1億円以下に減資して軽減税率15%等の優遇に戻す(過去の節税スキーム)

近年は税制改正で「資本金は1億円以下だが税負担能力のある法人」を中小法人税制から除外する動き(中小法人特例の見直し)も進んでいるため、減資による節税効果は限定的になっています。

タイプ別・あなたに合った資本金額

タイプ1:フリーランス・1人法人(節税目的)

推奨資本金: ¥1,000,000〜¥3,000,000

  • ✓ 消費税2年免税のため1,000万円「未満」を確保
  • ✓ 銀行口座開設の最低ラインとして¥1,000,000以上
  • ✓ 初期費用+3か月運転資金として¥1,000,000〜¥3,000,000が現実的
  • ✓ 個人事業時代の貯金から振り替える形で出資
  • ※ 取引先がBtoB中心の場合は¥3,000,000以上で信用力強化を推奨

タイプ2:BtoB中規模スタート(取引先信用重視)

推奨資本金: ¥3,000,000〜¥9,990,000

  • ✓ 消費税2年免税のため1,000万円「未満」を確保
  • ✓ 取引先からの信用度向上のため¥3,000,000以上
  • ✓ 「¥9,990,000」「¥9,999,000」と1,000万円直前の見栄えを取る選択肢も
  • ✓ メガバンクの法人口座開設審査でも資本金不足を理由にされにくい
  • ✓ 設立後の運転資金として6か月〜1年分を確保

タイプ3:許認可業種(業法要件あり)

推奨資本金: 業法上の最低純資産額+運転資金

  • ✓ 建設業(一般): 純資産500万円以上 → 資本金¥5,000,000以上を推奨
  • ✓ 派遣業: 純資産2,000万円以上 → 資本金¥20,000,000以上が必要(消費税免税は諦める)
  • ✓ 旅行業(第一種): 基準資産3,000万円以上 → 資本金¥30,000,000以上
  • ✓ 不動産業(宅建業): 保証協会加入で¥600,000・自己保証金は¥10,000,000
  • ※ 開業準備期間の支出を見越して、業法要件+20〜30%の余裕を持たせる

迷ったら「¥1,000,000で設立 → 必要に応じて増資」

資本金額は設立後の増資・減資で変更可能なため、迷った場合は¥1,000,000前後で設立し、事業の成長や取引先からの要請に応じて段階的に増資する戦略が現実的です。設立時の登録免許税は資本金860万円までは¥60,000固定(合同会社の場合)なので、設立コストへの影響もありません。

よくある質問(FAQ)

本当に資本金1円で会社設立できる?

はい、法律上は可能です。2006年(平成18年)5月施行の会社法で「最低資本金制度」が撤廃され、現行法では資本金の下限規定がありません(会社法第27条第4号)。実際の登記でも資本金¥1の合同会社・株式会社の設立は法務局で受理されます。ただし実務上は3つのデメリットがあります:①銀行口座開設の審査が厳しくなる(事業実態の証明が必要)、②取引先・賃貸物件オーナーからの信用が低下する(資本金は登記簿で公開される)、③設立後の運転資金が枯渇しやすい(資本金を運転資金として取り崩せるため)。実務的には¥1,000,000前後を運転資金見合いで設定する例が多くなっています。

資本金を999万円ピッタリに設定する人が多いのはなぜ?

消費税2年免税の境界が1,000万円「未満」だからです。消費税法第12条の2により、設立時の資本金が1,000万円以上の新設法人は基準期間がない第1期・第2期でも消費税の納税義務があります。逆に資本金1,000万円「未満」なら、設立から最大2期分の免税期間を得られる可能性があります(インボイス未登録・特定新規設立法人非該当が前提)。「ちょうど999万円」あるいは「¥9,990,000」「¥9,999,000」といった1,000万円直前の金額に設定するのは、免税メリットを最大化しつつ資本金額の見栄え(信用面)を確保するための実務的なテクニックです。ただしインボイス制度導入後、取引先からインボイス発行を求められる場合は登録後に課税事業者になるため、この免税メリットは消失します。

資本金が少ないと法人税が安くなる?

直接的には影響しません。法人税の課税対象は「課税所得」で、資本金は計算式に含まれません。ただし資本金額によって税制上の優遇措置の適用範囲が変わります:①資本金1億円以下の中小法人は所得800万円以下の部分で軽減税率15%(資本金1億円超は全所得23.2%一律)、②資本金1億円以下の中小法人は交際費等の損金算入限度額800万円/年または飲食費50%のいずれか有利な方を選択可、③資本金1,000万円未満なら消費税2年免税の可能性。「資本金が少ない=法人税が安い」ではなく、「資本金が大きすぎる(1億円超)と税制優遇から外れる」が正確な表現です。多くの中小規模設立では1億円超の心配は不要で、消費税の1,000万円境界だけ意識すれば十分です。

資本金は設立後に増やしたり減らしたりできる?

どちらも可能です。増資は社員総会・株主総会の決議+登記で実施します。登記の登録免許税は「増加した資本金の額×0.7%」(最低¥30,000・登録免許税法 別表第一 第24号(一)ニ)。新株式発行や持分追加出資で実行できます。減資は登記+債権者保護手続きが必要で、最低1か月以上の公告期間を経て登記します(会社法第449条等)。減資の登録免許税は¥30,000(登録免許税法 別表第一 第24号(一)ツ)。増資は設備投資・信用力強化の局面で、減資は資本金1億円を超えてしまった場合の中小法人税制復帰・累積赤字解消などで活用されます。設立時の資本金は後で柔軟に変更できるため、「迷ったらまず¥1,000,000前後で設立、必要に応じて増資」というアプローチも実務的です。

個人事業から法人成りする時、資本金はどう決める?

個人事業時代の運転資金規模を参考に、3つの軸で判断します:①消費税:個人時代の年間課税売上高が1,000万円超なら設立時も納税義務継続の可能性、未満なら資本金1,000万円未満設定で設立2期免税の可能性、②現物出資:個人時代の事業用資産(パソコン・在庫・車両等)を現物出資すれば資本金額を増やせる、③信用:個人事業の取引先が法人化後も継続するなら、急に資本金¥1で登記すると不審がられる可能性。法人成りでよく採用される資本金額は¥1,000,000〜¥5,000,000。個人事業の事業規模・取引先構成・消費税状況によって変動します。詳しい法人成り判断は個人vs法人 手取り比較シミュレーター法人化の決め方でシミュレーションできます。

まとめ:1,000万円・1億円の2つの境界線で判断する

本記事のポイントをまとめます。

資本金の決め方・最終チェックリスト

  • 会社法上の下限は1円(最低資本金制度は2006年廃止)
  • 消費税2年免税の境界は1,000万円「未満」(消費税法12条の2・最重要)
  • 法人税軽減税率・交際費1/2損金算入の境界は1億円「以下」(中小規模設立では通常意識不要)
  • 法人住民税均等割の最低区分は1,000万円以下・従業者50人以下で年¥70,000
  • 許認可業種は業法上の純資産・基準資産要件が別途必要(建設業500万円・派遣業2,000万円 等)
  • 設立後の増資・減資は可能(増資 ¥30,000〜・減資 ¥30,000+公告1か月)
  • 実務上の推奨は¥1,000,000〜¥3,000,000(中小企業庁データ中央値帯・銀行口座開設・取引信用面で問題が出にくい)

設立時に金額を迷う場合は、¥1,000,000前後で設立してから事業成長に応じて増資する戦略が現実的です。設立後の手続きは会社設立後やること完全ガイド、年間維持費は法人の維持費完全ガイドで詳述しています。

会社設立そのものを無料サービスで進めたい場合は、マネーフォワード クラウド会社設立が必要書類を自動作成し、電子定款で印紙税¥40,000を不課税にできる傾向があります。資本金額を含む定款の文言も入力フォームから決定でき、設立後の会計ソフト連携までを一気通貫で進めやすい設計です。

出典・編集情報

一次ソース

  • 会社法 第27条(株式会社の定款記載事項)・第578条/第585条(合同会社):e-Gov lawid=417AC0000000086
  • 消費税法 第9条(小規模事業者の免税)・第12条の2(資本金1,000万円以上の新設法人)・第12条の3(特定新規設立法人)・第57条の2(適格請求書発行事業者):e-Gov lawid=363AC0000000108
  • 国税庁タックスアンサー No.6531「新たに事業を開始した場合の納税義務の免除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6531.htm
  • 法人税法 第66条第2項(中小法人軽減税率):e-Gov lawid=340AC0000000034
  • 国税庁タックスアンサー No.5759「法人税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
  • 租税特別措置法 第61条の4(交際費)/ 国税庁タックスアンサー No.5265 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
  • 地方税法 第52条・第312条(法人住民税均等割):e-Gov lawid=325AC0000000226
  • 建設業法 第7条・第15条 / 職業安定法 第32条 / 労働者派遣法 第7条 / 旅行業法 第6条 / 宅地建物取引業法 第25条
  • 中小企業庁 中小企業白書・開業実態調査 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/

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編集:法人化ナビ編集部 / 公開:2026年5月27日 / 最終更新:2026年5月27日
本記事は法令一次ソース(会社法・消費税法・法人税法・地方税法・各業法・国税庁・中小企業庁)に基づいて作成しています。中小企業庁の開業実態調査の構成比は直近年度の概算であり、最新値は中小企業白書原典でご確認ください。

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