法人の維持費完全ガイド|均等割・社保・税理士顧問料の年間コスト試算

法人の年間維持費を「法人住民税均等割¥70,000」「社会保険料(役員報酬30万円時 年¥522,000)」「税理士顧問料 年¥280,000〜¥450,000」「会計ソフト 年¥40,000〜¥60,000」の4項目で内訳分解。役員報酬30万円・売上1,000万円未満想定で年間¥900,000〜¥1,000,000の試算を一次ソース付きで解説します。

執筆: 法人化ナビ編集部 / 最終更新: 2026年5月27日

法人の維持費の主要数値(令和8年度・2026年)

均等割は赤字でも年¥70,000、社保は役員報酬連動で大きく変動。

  • 年¥70,000 均等割 資本金1,000万円以下
  • 年¥522,000 社保(役員報酬30万円時) 事業主負担分のみ
  • 年¥28〜45万 税理士顧問料相場 売上1,000万円未満
  • 年¥80〜100万 年間合計目安 標準ケース・任意項目除く
法人の維持費完全ガイド:均等割・社保・税理士顧問料・会計ソフトの年間コスト試算を解説するアイキャッチ

法人を維持するには、所得や利益に関係なく毎年必ず発生する固定費があります。最低でも法人住民税均等割の年¥70,000(赤字でも発生)、役員報酬を支給するなら社会保険料が連動して大きく加算されます。役員報酬30万円・売上1,000万円未満の標準ケースなら、年間維持費は¥900,000〜¥1,000,000程度が現実的な目安です。

ここでは、法人の維持費を「均等割・社保・税理士顧問料・会計ソフト・その他」の5項目に分解し、それぞれの相場と根拠条文を一次ソース付きで整理します。後半では業績悪化時の維持費削減策、合同会社と株式会社の維持費差、3タイプ別の年間シミュレーションを掲載しています。

この記事の前提と免責

  • 金額・料率は2026年5月時点。社会保険料率は協会けんぽ東京都を採用しているため、地域差で実額は変動します
  • 税理士顧問料の相場は税理士ドットコム公開データを含む複数の税理士事務所の公開料金からの集約値です。実際の見積額は税理士個別の方針・サービス内容で大きく変動します
  • 本記事のシミュレーションは「役員1人法人」を基本ケースとしています。従業員雇用がある場合は労働保険・給与計算・年末調整等の追加コストが発生します

結論:役員報酬を出す前提なら年間¥800,000〜¥1,000,000が標準

結論を先に出します。法人の年間維持費は役員報酬額により大きく変動します。

役員報酬別の年間維持費・1分で結論

  • 役員報酬ゼロ年¥70,000〜(均等割のみ・社保は不要だが代表者個人で国保国年加入が必要)
  • 役員報酬月額20万円 → 年¥700,000〜¥850,000(均等割¥70,000+社保¥348,000+税理士¥280,000〜+会計ソフト等)
  • 役員報酬月額30万円(標準ケース)年¥900,000〜¥1,000,000(均等割¥70,000+社保¥522,000+税理士¥280,000〜+会計ソフト等)
  • 役員報酬月額50万円 → 年¥1,300,000〜¥1,500,000(均等割¥70,000+社保¥870,000+税理士¥350,000〜+会計ソフト等)

最大の変動費は社会保険料です。役員報酬を高く設定するほど社保負担が増え、法人の維持費が膨らみます。一方で役員報酬を法人の損金に算入できる(=法人税が下がる)ため、トータルでの税負担最適化は役員報酬の決め方社保シミュレーターを組み合わせて判断してください。

設立費用そのものは合同会社設立費用の完全ガイド、設立後の手続きは会社設立後やること完全ガイド、資本金額の決め方は資本金の決め方完全ガイドで詳述しています。

法人住民税均等割(最低¥70,000・赤字でも発生)

法人住民税均等割(地方税法 第52条・第312条)は、所得や利益に関係なく毎期必ず発生する固定費です。赤字でも・休眠中(自治体による)でも必ず発生します。

出典:地方税法 第52条(道府県民税均等割)・第312条(市町村民税均等割)令和8年度時点
資本金等の額従業者数道府県民税市町村民税合計
1,000万円以下50人以下¥20,000¥50,000¥70,000
1,000万円以下50人超¥20,000¥120,000¥140,000
1,000万円超〜1億円以下50人以下¥50,000¥130,000¥180,000
1,000万円超〜1億円以下50人超¥50,000¥150,000¥200,000
1億円超〜10億円以下50人以下¥130,000¥160,000¥290,000
1億円超〜10億円以下50人超¥130,000¥400,000¥530,000

多くの中小法人は最低区分(資本金1,000万円以下・従業者50人以下)に該当し、年¥70,000が固定で発生します。東京23区内に本店を置く場合は都民税として一括徴収(市区町村役所への分は不要)。

均等割の月数按分(設立第1期)

設立第1期が12か月未満の場合は月数按分されます。たとえば6か月決算なら¥70,000 ÷ 12 × 6 = ¥35,000、9か月決算なら¥52,500など。設立月を事業年度の終わり側にすると、第1期の均等割を抑えられる場合があります。

社会保険料(役員報酬連動の最大変動費)

法人事業所は役員1人だけでも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所(健保法第3条第3項・厚年法第6条第1項3号)になります。役員報酬を支給する以上、社会保険料の負担は避けられません。

料率の内訳(健保9.98%・厚年18.3%・子ども子育て0.36%)

出典:全国健康保険協会 令和8年度料率表・厚生年金保険法 第81条・子ども・子育て支援法 第69条
保険種別料率事業主負担被保険者負担備考
健康保険(令和8年度・東京都)9.98%4.99%4.99%労使折半
介護保険(40〜64歳)1.60%0.80%0.80%健保料率に上乗せ
厚生年金18.30%9.15%9.15%労使折半・全国一律
子ども子育て拠出金0.36%0.36%0%事業主のみ負担
事業主負担合計(40歳未満)14.50%14.50%労使折半分+子ども子育て
事業主負担合計(40〜64歳)15.30%15.30%介護保険込み

役員報酬月額別の年間社保負担(事業主負担分)

役員報酬を月額¥200,000〜¥800,000の範囲で設定した場合の事業主負担分の年間社保料は次のとおり(40歳未満・東京都ケース)。

出典:全国健康保険協会 令和8年度等級表(東京都・40歳未満)。実額は介護保険・地域別料率で変動
役員報酬月額標準報酬月額健保(事業主)厚年(事業主)子ども子育て年間合計(事業主)
¥200,000¥200,000¥9,980¥18,300¥720¥348,000
¥300,000¥300,000¥14,970¥27,450¥1,080¥522,000
¥500,000¥500,000¥24,950¥45,750¥1,800¥870,000
¥800,000¥830,000¥41,417¥75,945¥2,988¥1,444,200

高額報酬では負担率が逓減する(標準報酬月額に上限あり)

厚生年金の標準報酬月額は¥650,000で上限(32等級)、健康保険は¥1,390,000で上限(50等級)に達します。そのため役員報酬¥1,000,000以上のゾーンでは、報酬を増やしても社保負担は頭打ちになり、税負担最適化の余地が出てきます。一方で老齢厚生年金の受給額にも標準報酬上限が反映されるため、長期的なメリットとのバランス判断が必要です。

役員報酬の最適額決定は法人税・所得税・住民税・社保の4軸最適化問題で、税理士相談の費用対効果がもっとも大きく出る領域です。社保シミュレーターで報酬月額別の手取りを試算しつつ、複数報酬パターンを比較検討してください。

役員報酬・社保・法人税の最適化は法人化後の最大の論点の1つです。税理士ドットコムは累計相談件数25万件以上、相談・紹介料は無料で全国対応の傾向があり、初期相談だけでも自社の状況に合う税理士を探せます。

税理士顧問料(売上規模別の相場)

税理士顧問料は法律上の必須項目ではありませんが、実務上は法人化後の標準的な維持費の1つになっています。料金体系は月額顧問料+決算料の組み合わせが一般的です。

出典:税理士ドットコム公開データを含む複数税理士事務所の公開料金表からの集約値(2026年5月時点)
売上規模月額顧問料決算料年間合計(目安)
売上1,000万円未満¥15,000〜¥25,000¥100,000〜¥150,000¥280,000〜¥450,000
売上1,000万円〜3,000万円¥25,000〜¥35,000¥150,000〜¥200,000¥450,000〜¥620,000
売上3,000万円〜5,000万円¥35,000〜¥50,000¥200,000〜¥300,000¥620,000〜¥900,000
売上5,000万円〜1億円¥50,000〜¥70,000¥300,000〜¥400,000¥900,000〜¥1,240,000

顧問料の主要構成要素は次のとおりです:①月次記帳代行(自社記帳なら半額程度に下がる傾向)、②年次決算書作成・法人税申告、③消費税申告、④税務相談、⑤税務調査対応。給与計算・年末調整は別オプション(¥30,000〜¥80,000/年)になることが多くなっています。

顧問契約の代替パターン

「年間¥280,000〜の税理士顧問料を払いたくない」場合の代替手段:

  • スポット契約:決算のみ依頼。年¥150,000〜¥250,000程度で月次は自社処理
  • クラウド会計ソフトの自社申告:マネーフォワード・freee・弥生のクラウド会計の申告書作成機能を活用。年¥40,000〜¥60,000のソフト代のみで顧問料ゼロ。ただし申告書作成に20〜40時間の時間コスト発生
  • 記帳代行+税理士スポット:記帳代行業者に月¥10,000〜¥20,000で記帳を委託し、決算のみ税理士へ。年¥250,000〜¥400,000程度

会計ソフトの月額(クラウド会計が標準)

法人の会計は複式簿記による仕訳・貸借対照表/損益計算書の作成・法人税申告書の作成と、個人事業時代より格段に複雑になります。設立直後からクラウド会計ソフトを導入するのが実務的な標準です。

プラン名・価格は2026年5月時点。キャンペーン価格・年払い割引で変動するため公式サイトで最新値を確認
サービス法人ベーシック月額法人スタンダード月額年額目安
マネーフォワード クラウド会計¥3,278/月¥4,378/月¥40,000〜¥53,000
freee会計¥3,278/月¥5,478/月¥40,000〜¥66,000
弥生会計 Next¥3,500/月相当¥4,500/月相当¥42,000〜¥54,000

クラウド会計ソフトのメリットは、①税理士との連携が容易(多くの税理士事務所がマネフォ・freee・弥生のいずれかに対応)、②電子申告(e-Tax・eLTAX)に対応、③インボイス制度・電子帳簿保存法に標準対応、④銀行口座・クレジットカードとの連携で記帳自動化、の4点。年¥40,000〜¥60,000の費用で大幅な工数削減が期待できる傾向があります。

その他の維持費(VO・登記事項変更等)

バーチャルオフィス(任意・登記住所として)

自宅住所を法人登記簿に載せたくない場合、バーチャルオフィスを月額¥0〜¥3,000程度で利用できます。年額換算で¥0〜¥36,000。詳しくは法人登記対応バーチャルオフィス3社比較を参照。

登記事項変更の登録免許税(イベント毎)

出典:登録免許税法 別表第一 第24号(一)
変更項目登録免許税頻度の目安
役員変更登記¥10,000株式会社は最長10年に1度(任期満了改選)
本店移転登記(同一管轄内)¥30,000随時
本店移転登記(管轄外)¥60,000随時
事業目的変更登記¥30,000随時
増資登記増加額×0.7%・最低¥30,000事業拡大時
商号変更登記¥30,000随時

その他の小規模固定費

任意で発生する維持費

  • 株式会社の決算公告:官報公告¥60,000/年または電子公告(自社ウェブサイト掲載で実質無料)
  • 法人カード年会費:¥0〜¥30,000程度。年会費無料のビジネスカードも増加
  • 銀行振込手数料・口座維持費:年¥0〜¥12,000程度(ネット銀行は無料が多い)
  • 固定電話・FAX:月¥2,000〜¥5,000・任意(バーチャルオフィスの電話オプションでも代替可)
  • 自社ホームページ・ドメイン・サーバー:年¥10,000〜¥50,000程度

業績悪化時の維持費削減策

削減策1:役員報酬の減額(社保負担も連動して減少)

期中の役員報酬減額は「業績悪化改定事由」に該当する場合のみ損金算入可能です(法人税法第34条第1項二号・施行令第69条)。業績悪化改定事由の例:①売上の大幅減少、②継続的な赤字、③債務超過の懸念、④経営者個人の重大な疾病等。

役員報酬の減額を実施したら、社会保険料の月額変更届(随時改定)も同時に行います。3か月連続で固定額に変更し標準報酬月額が2等級以上変動する場合、4か月目から新標準報酬月額で社保料を計算(健保法第43条・厚年法第23条)。

単なる節税目的の減額は損金不算入リスク

「業績悪化改定事由」に該当しない減額は、減額後の役員報酬と減額前の役員報酬の差額が損金不算入となる可能性があります。実務上は、減額の根拠資料(決算書の悪化推移・取引先からの発注減通知・債権者との交渉記録等)を整え、税理士相談を経てから実施することを強く推奨します。

削減策2:税理士契約をスポット契約に変更

月額顧問契約から「決算のみスポット依頼」への切り替えで、年¥180,000〜¥420,000の削減が見込めます。ただし月次の税務相談・記帳代行は自社で対応する必要があります。

削減策3:会計ソフトのプラン・サービスダウングレード

クラウド会計の「法人スタンダード」→「法人ベーシック」へのダウングレードで月¥1,000〜¥2,000、年¥12,000〜¥24,000の削減。プランダウンで失う機能(部門別会計・予算実績比較等)が業務上必要か事前確認が必要です。

削減策4:休眠(一時休止)

事業を一時休止する場合、法人住民税均等割は自治体により減免規定があります。東京都の場合は休眠届の提出で減免可能ですが、自治体差が大きいため事前確認が必要です。社会保険は役員報酬ゼロにすれば負担ゼロ、ただし健保資格喪失で国保切り替えが必要。

合同会社 vs 株式会社 維持費比較(年¥60,000差)

出典:会社法 第440条(決算公告)・法人税法・地方税法・健康保険法・厚生年金保険法
維持費項目合同会社株式会社差額
法人住民税均等割(最低)¥70,000/年¥70,000/年¥0
社会保険料(役員報酬30万円時)¥522,000/年¥522,000/年¥0
税理士顧問料¥280,000〜/年¥280,000〜/年¥0
会計ソフト¥40,000〜¥60,000/年¥40,000〜¥60,000/年¥0
決算公告不要(¥0)官報¥60,000/年または電子公告(自社サイトで実質無料)¥0〜¥60,000
役員任期・改選任期なし最長10年(非公開会社)→ 役員変更登記¥10,00010年で¥10,000
株主総会の運営不要(社員総会・任意)毎年必要運営工数差

差は約¥60,000、ただし電子公告で大幅縮小

株式会社の決算公告は電子公告(自社ウェブサイト掲載)を選択すれば実質無料です。電子公告の登記費用は¥30,000(設立時のみ)で、毎年の官報公告¥60,000を回避できます。電子公告を選ぶ株式会社が増えているため、合同会社・株式会社の維持費差は実態として僅少になりつつあります。形態選びの判断は維持費差より「信用力・経営自由度・将来の上場可能性」で行うほうが合理的です。詳しくは合同会社 vs 株式会社 完全比較を参照。

タイプ別シミュレーション

タイプ1:フリーランス1人法人(節税目的・最小構成)

年間維持費の試算: 約¥712,000

  • 法人住民税均等割(資本金1,000万円以下): ¥70,000
  • 社会保険料(役員報酬月額20万円・事業主負担分): ¥348,000
  • 税理士顧問料(売上1,000万円未満・最低ライン): ¥280,000
  • 会計ソフト(法人ベーシック): ¥40,000
  • バーチャルオフィス(VO1月額880円): ¥10,560
  • その他(実印補充・登記簿謄本等): ¥3,000
  • 合計: 約¥751,560/年

タイプ2:BtoB標準ケース(売上1,500万円・役員報酬30万円)

年間維持費の試算: 約¥1,022,000

  • 法人住民税均等割: ¥70,000
  • 社会保険料(役員報酬月額30万円・事業主負担分): ¥522,000
  • 税理士顧問料(売上1,000万円〜3,000万円): ¥450,000
  • 会計ソフト(法人スタンダード): ¥53,000
  • バーチャルオフィス: 不要(自社オフィス契約済)
  • その他(決算公告・株主総会運営等): ¥0(合同会社)
  • 合計: 約¥1,095,000/年

タイプ3:税理士スポット運用(売上800万円・節約優先)

年間維持費の試算: 約¥793,000

  • 法人住民税均等割: ¥70,000
  • 社会保険料(役員報酬月額30万円): ¥522,000
  • 税理士スポット契約(決算のみ): ¥150,000
  • 会計ソフト(法人スタンダード): ¥53,000
  • 記帳代行: 不要(自社処理)
  • その他: ¥0
  • 合計: 約¥795,000/年

法人化判断との連動

個人事業 vs 法人の損益分岐は、年間維持費がそのまま「法人化のハードル」になります。維持費¥800,000〜¥1,000,000を上回る法人化メリット(節税・信用・有限責任等)が見込めるかが判断軸です。具体的な手取り比較は個人vs法人 手取り比較シミュレーターで年商別に試算できます。

よくある質問(FAQ)

法人住民税均等割は赤字でも払うの?

はい、赤字でも必ず発生します。法人住民税均等割は法人の事業活動の結果に関係なく、法人が存在することそのものに対して課される税です(地方税法 第52条・第312条)。資本金1,000万円以下・従業者50人以下の最低区分で年¥70,000(道府県民税¥20,000+市町村民税¥50,000、東京23区は都民税として¥70,000一括徴収)。赤字で法人税ゼロでも、消費税ゼロでも、均等割は毎年確実に発生します。設立第1期が12か月未満の場合は月数按分されます(例:6か月なら¥35,000)。法人を休眠状態にしても自治体によっては均等割が継続する場合があるため、長期休眠の予定がある場合は自治体ごとの減免規定を確認してください。

役員報酬をゼロにすれば社保負担はなくなる?

はい、役員報酬をゼロにすれば社会保険料はゼロになります。社会保険料は「標準報酬月額」(=月額役員報酬)を基準に計算されるため、役員報酬ゼロなら標準報酬月額が決まらず加入義務を免れます。ただしデメリットも大きく:①代表者本人が健康保険・厚生年金の被保険者資格を喪失する、②国民健康保険・国民年金への切り替えが必要になり、結局類似の社会保険料負担が個人として発生する、③役員報酬ゼロで会社経費(家賃・通信費等)を法人で支払うと、税務調査で「不相当な経費計上」と指摘されるリスクがある、④役員報酬を経費化できないため法人税負担が増える可能性。実務的には「役員報酬¥0」より「役員報酬¥45,000〜¥60,000程度(社保最低等級)」のほうがバランスが取れるケースが多くなっています。詳細は役員報酬と社会保険料を参照。

税理士なしで自分で申告できる?

法律上は可能です。法人税申告・消費税申告は税理士に依頼する義務はなく、自分でe-Tax電子申告を行うことができます。ただし実務上の負担は大きく:①法人税申告書は別表1〜18の多数の書式があり、別表4(所得金額調整)・別表5(利益積立金・資本金等の額)の理解には簿記・税法の知識が必要、②消費税申告は本則課税・簡易課税・インボイス制度の影響等で複雑、③税務調査対応では税理士の代理交渉権が大きなメリット。自分で申告する場合は会計ソフトの「申告書作成機能」を活用し、年に1回スポット税理士相談(¥30,000〜¥50,000)を組み合わせる運用も現実的です。完全に税理士なしで運用する場合、年間で節約できる費用は¥280,000〜¥450,000ですが、申告書作成に20〜40時間の時間コストがかかる点を考慮してください。

業績悪化したら役員報酬を下げて社保負担を減らせる?

可能ですが、法人税法上の「業績悪化改定事由」に該当する必要があります。法人税法第34条第1項二号・施行令第69条により、期中の役員報酬減額は次のいずれかに該当する場合のみ損金算入可能:①経営状況の著しい悪化(売上の大幅減・継続的赤字等)、②財務状況の著しい悪化(債務超過の懸念等)、③その他やむを得ない事情(経営者個人の病気等)。単なる利益確保目的の減額は損金不算入リスクがあります。社会保険料の側では、役員報酬を3か月連続で固定額に変更し標準報酬月額が2等級以上変動する場合に「月額変更届(随時改定)」を提出し、4か月目から新標準報酬月額で社保料計算(健保法第43条・厚年法第23条)。減額の手続きは複雑なので、業績悪化時は事前に税理士相談を推奨します。

合同会社のほうが株式会社より維持費が安い?

はい、年間で約¥60,000の差があります。差の主な要因は「決算公告」の有無です。株式会社は会社法第440条により毎年の決算公告が義務化されており、官報公告で¥60,000/年、または電子公告(自社ウェブサイト掲載)で実質無料という選択肢があります。合同会社は決算公告義務がないため、この¥60,000がそのまま節約できます。それ以外の維持費項目(均等割・社保・税理士顧問料・会計ソフト)は合同会社・株式会社で差がないため、年間維持費差は約¥60,000程度です。なお株式会社は役員任期があり(最長10年・非公開会社)、改選時の役員変更登記¥10,000が10年に1度発生する点も合同会社との差ですが、年換算では¥1,000/年と僅少です。詳細は合同会社 vs 株式会社 完全比較を参照。

まとめ:均等割+社保+顧問料で年間80万円〜100万円を見積もる

本記事のポイントをまとめます。

法人の維持費・最終チェックリスト

  • 法人住民税均等割: 最低区分(資本金1,000万円以下・従業者50人以下)で年¥70,000。赤字でも発生
  • 社会保険料: 役員報酬連動の最大変動費。役員報酬30万円なら事業主負担分年¥522,000
  • 税理士顧問料: 売上1,000万円未満で年¥280,000〜¥450,000が相場
  • 会計ソフト: クラウド会計で年¥40,000〜¥60,000。設立直後から導入が標準
  • バーチャルオフィス(任意): 月額¥0〜¥3,000・年額¥0〜¥36,000
  • 合同会社 vs 株式会社の差: 決算公告¥60,000/年程度(電子公告選択で実質無料)
  • 業績悪化時の削減策: 役員報酬減額・税理士スポット化・会計ソフトダウン

役員報酬30万円・売上1,000万円未満の標準ケースで、年間維持費は¥900,000〜¥1,000,000程度。法人化判断時はこの維持費を「法人化のハードル」として見積もり、個人事業継続との比較で個人vs法人 手取り比較シミュレーターを使って判断してください。

会社設立そのものを無料サービスで進めたい場合は、マネーフォワード クラウド会社設立が必要書類を自動作成し、電子定款で印紙税¥40,000を不課税にできる傾向があります。設立後の会計ソフト連携までを一気通貫で進めやすい設計です。

出典・編集情報

一次ソース

  • 地方税法 第52条(道府県民税均等割)・第312条(市町村民税均等割):e-Gov lawid=325AC0000000226
  • 健康保険法 第3条第3項(強制適用事業所):e-Gov lawid=326AC0000000070
  • 厚生年金保険法 第6条第1項3号(強制適用事業所)・第81条(保険料率):e-Gov lawid=329AC0000000115
  • 全国健康保険協会 令和8年度料率表 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/
  • 子ども・子育て支援法 第69条:e-Gov lawid=424AC0000000065
  • 法人税法 第34条第1項二号(役員給与)・施行令 第69条(業績悪化改定事由):e-Gov lawid=340AC0000000034
  • 会社法 第440条(株式会社の決算公告義務):e-Gov lawid=417AC0000000086
  • 登録免許税法 別表第一 第24号(一):e-Gov lawid=342AC0000000035
  • 税理士ドットコム 顧問料・料金相場(複数税理士事務所公開データ集約値)

関連リンク

編集:法人化ナビ編集部 / 公開:2026年5月27日 / 最終更新:2026年5月27日
本記事は法令一次ソース(地方税法・健康保険法・厚生年金保険法・法人税法・会社法・全国健康保険協会令和8年度料率表)に基づいて作成しています。社会保険料率は地域差があり、税理士顧問料は税理士個別の方針・サービス内容で変動するため、実額は各サービスの見積もりでご確認ください。

本ツールは令和8年度(2026年)の税率・基準をもとに計算しています。最新の情報は各省庁のWebサイト等でご確認ください。